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「2011上関町長選」 中電「原発理解」で行脚

 20日に町長選が告示される山口県上関町で、中国電力が上関原発の建設に理解を求める活動を続けている。町長選では過去、原発推進派の候補が5、6割の得票率を維持。福島第1原発事故で得票率が下がれば、建設へさらなる逆風となる。中電は選挙に距離を置きながらも、町民の「変化」に神経をとがらせる。(山本和明)

 8月下旬、民家を訪ねて回る中電社員の姿があった。「これまで以上に皆さまに安心いただける発電所づくりに努めます」。こう書かれた広報誌を手にした約70人が、町内を歩く。

 「より安全な発電所を造ってほしい」「完成までは時間がかかるでしょうね」…。住民からさまざまな声が掛かる。中電の上関原発準備事務所は「事故を機に、原子力はいらないという声は少ない」と説明する。

 福島第1原発の事故後の3月から、中電はこうした「理解活動」を続けている。反対運動の拠点となっている祝島などを除く約1300世帯が対象。事故後、各世帯を8巡した。

 中電が注視するのは、25日に投開票される町長選での推進派候補の得票率だ。「これまでの賛否の割合を維持できるだろうか」。中電の元役員は、事故を受けた得票率の変化を懸念する。

 原発計画の浮上後、過去8回の町長選は全て推進派と反対派の一騎打ちとなり、推進派が53.8~66.9%の得票率で当選してきた。住民合意の根拠の一つとされてきた得票率が大きく変化すれば、中電には衝撃となる。現時点では、推進の立場の現職のほかに立候補の表明はないが、反対派も候補擁立を予定している。

 ある中電幹部は「引き続き推進に向け協力をしていただけると思う」と期待する。だが元役員は「何が何でも原発は駄目という雰囲気が世の中にある。これまでとは状況が違う」とみる。どこまで事故が得票に響くかは見通せないと話す。

 中電は「会社として特定の候補を支援することはない」として静観のスタンスを示しており、表立った動きはない。中電の労組にも候補を推薦するなどの動きはみられない。

(2011年9月5日朝刊掲載)

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