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広島の復興語る写真126枚 広島の泉美術館

 写真家や自治体、新聞社などが所有する写真を横断的に使い、廃虚から立ち上がった広島の歩みをたどる写真展「復興の記憶」が、広島市西区商工センターの泉美術館で開かれている。復興期の生きざまを世代を超えて伝えるとともに、この時代の写真の貴重さを訴え、保存、活用につなげたいとの思いも込める。

 入り口にあるのは1945年10月に撮影された広島市内の全景。まだ一面焼け野原だ。海に向き、開けた視界。「見えるはずのない似島が見えた」。戦地や疎開先などから戻った人たちが驚きとともに語った光景を復興の出発点とする。

 一転、その隣から活気ある光景が広がる。焼け跡で拾ったらしいぐいのみとガムを交換するよう米兵に迫る子どもたち、広島駅前のごった返す闇市、相生橋の復旧工事につちを振るう男性、焼け焦げた樹木に板をつるして開いた青空教室、持ち込まれた食材を煮炊きするバラックの店も。復興から高度成長へ―。食べる物も着る物も不足する中、たくましく生き抜いていく人々の笑顔が印象的だ。

 会場に置かれたアンケートには「昔見た光景が昨日のことのようによみがえった」と懐かしむ文字が並ぶ。中には「前向きに歩いて来られた広島の皆さんのパワー、活力に感動した。東日本大震災の被災地の皆さんにも頑張ってほしい」と今に思いを重ねる人もいた。

 写真展は、大手スーパー・イズミ(広島市南区)が創業50周年を記念して企画した。会場には、前身の繊維問屋・山西商店以来の同社の歩みも含め、写真126枚が展示されている。

 写真展の責任者として昨年11月から準備したのは、広島市中区で写真専門ギャラリーを営む松浦康高さん(55)。本や過去の新聞などを見て、復興をたどるのに欠かせない写真を選んだ。

 戦後の多くの場面を撮影している明田弘司さん(88)=中区=や故松本若次さんら写真家、原爆資料館、広島市公文書館など公的機関、中国新聞社、毎日新聞社などの写真。ニュージーランドの博物館から占領期のカットも借りた。「個人、団体を超えて写真を結集させれば、一つのストーリーとして展示できることが分かった」と松浦さん。

 今、会場で多く聞くのが「復興期のこうした写真をいつでも見られる場所があれば」との声だとも。「今回の震災でも復興への生きざまは後世に残すべきだと皆強く感じたはず。広島復興の力強さは、われわれの誇り。今の世代が伝えていかなくては」と松浦さん。

 懸念するのは、古いネガフィルムが長い年月の間にビネガーシンドローム(加水分解による劣化)を起こし、画像が失われてしまうこと。「展示だけでなく、保管やデジタル化ができる拠点も必要。写真展がそんな機運を高めるきっかけにもなれば」と話している。

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 「復興の記憶」展は19日まで。入場無料。月曜休館。(守田靖)

(2011年9がう3日朝刊掲載)

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