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中国地方は394人参列 終戦70年戦没者追悼式 次代へ平和継承誓う

 終戦の日の15日、東京都千代田区の日本武道館であった全国戦没者追悼式に、中国地方から遺族394人が参列した。戦後70年の夏、参列者は犠牲となった肉親をしのび、次代へ平和を引き継ぐ決意を新たにした。

 広島県代表の大畑武文さん(72)=三次市=は、兄の晃三さんをフィリピンで亡くした。「2日間の激戦で命を落とした。遺骨も遺品も何もない」。70年の節目に初めて参列し、「平和に暮らさせてもらっています」との思いを込めて献花した。

 「父に頼まれて戦地に送った家族写真が、届かぬまま戻ってきたのが今も心残り」。島根県代表の川上繁男さん(84)=出雲市=はフィリピンで父の覚(かく)さんを失った。「食料もなく、逃げ回って亡くなったのかもしれない」と父の最期に思いをはせた。

 岡山県代表の西崎知義さん(84)=岡山市東区=の兄自賀三(じがぞう)さんは、飛行機の訓練中の事故で命を落とした。「追悼式での慰霊の機会は最後かもしれない。むごたらしい戦争は二度とすべきじゃない」

 孫の世代の参列も目立つ。山口県代表の松田健一さん(49)=萩市=は、ソロモン諸島で船を沈められて祖父山影一雄さんを亡くした。今回の参列を機に、母から祖父の亡くなった経緯を詳しく聞いた。「母から聞いたことを自分の子どもたちに伝えていきたい」と話した。

 一般戦災死没者遺族代表の柳知明さん(65)=周南市=は、同市の空襲で犠牲となった祖父虎之丞(とらのじょう)さんのはかまを着て参列した。「空襲の事実が風化している。伝えていかないといけない」。戦争の悲惨さを語り継ぐ大切さをかみしめた。

 国会では今夏、集団的自衛権の行使を可能とする安全保障関連法案の議論が進む。中国・湖南省で父愛博(あいはく)さんを亡くした鳥取県代表の石田昌弘さん(78)=倉吉市=は「いったん戦争になれば、人の命はどうでもよくなってしまう。二度と戦争に加担することがないように」と願う。

 原爆死没者遺族代表の門隆興さん(73)=広島市南区=の父英雄さんは、原爆に遭い、70年前の15日に息を引き取った。世界から核兵器がなくならない現状に「被爆地から声を上げ続けなければいけない」。父の命日に誓った。(山本和明、清水大慈、藤村潤平)

(2015年8月16日朝刊掲載)

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