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戦争の記憶 風化を問う 広島の岩崎さん初参加

 広島市中区のアーティスト、岩崎貴宏さん(36)がヨコハマトリエンナーレに初参加し、ヒロシマを題材にした作品を展示している。大がかりな作品が多い中、ありふれた日用品を素材にし、戦争の記憶の風化を問う表現が注目を集めている。

 メーン会場の横浜美術館の展示室。ビニールひもで縛られた古新聞が、廃品回収に出すかのように床に置かれている。一番上の紙面には原爆ドームの写真がのぞく。束を建物に見立てたかのように、その上にミニチュアの広告掲示板が立ち、繁華街らしき風景写真がはめこまれている。

 古新聞には8月6、9、15日付が含まれ、掲示板の風景は原爆投下前の広島市中心部という。毎年、巡り来る広島、長崎の原爆の日と終戦の日。その日が終われば、まるで廃品回収に出される古新聞のように、現代人の脳裏から忘れ去られてしまう「戦争の記憶」の危うさを問い掛ける。

 新聞やチラシから切り抜いた企業ロゴなどを使い、都市のミニチュアを精巧に作るシリーズの第1作。戦後社会の在り方を問うシリーズの視点を今回作で明確にした。岩崎さんは祖父が被爆者で、ヒロシマは創作テーマの柱の一つ。ここ数年、海外へも活躍の場を広げる。本作品は、ヒロシマを表現の原点とする「決意表明」にもみえた。(西村文)

 ヨコハマトリエンナーレは11月6日まで。

(2011年9月6日朝刊掲載)

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