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連載・特集

ネパール大地震の復興支援継続を 広島大で博士号の脳神経外科医パントさんに聞く

リハビリ体制が絶対的に不足

 ネパールから広島大大学院に留学して博士号を取得し、母国で脳神経外科医の第一人者として活躍するバサント・パントさん(54)が広島に一時帰ってきた。4月のネパール大地震での体験や医療面での課題を聞いた。(金崎由美)

 ―現地はどの程度復興に向かっていますか。
 首都カトマンズに限れば、ほぼ通常の生活に戻った。世界中からの支援のおかげだ。私が代表を務める「ネパール神経医学財団」も、広島在住のネパール人留学生や市民で結成した「広島・ネパール アースクウェイク・リリーフチーム」などの支援を受け、117軒の仮設住宅を建てた。感謝の意を込め、費用を寄付した一人一人の名前を記したプレートを作製し、外壁に取り付けた。

 元から電気や水道が完備された生活が当たり前ではない私たちにとって、日常の「復興」は思っていたより早い。むしろ観光立国としての影響が気になる。

 ―地震発生時はどんな状況でしたか。
 私が勤める医療機関でミーティング中だった。突然ものすごい揺れに襲われた。負傷者が次々と運び込まれ、余震の中で緊急手術を続けた。3日ほどは文字通り、不眠不休だった。

 竹やトタンの簡素な家はほぼ無事だったが、れんがの家はことごとく崩れた。家の下敷きになり、首から下や下半身がまひした重傷患者がたくさんいる。より軽症の患者はさらに多い。

 ―医師として、どんな課題を感じていますか。
 残った体の機能を生かす訓練をしたり、より軽症の人が仕事に戻れるよう支えていったりすることだ。少しでも人間的な生活を取り戻すため、リハビリできる体制が求められる。ネパールには絶対的に不足している。

 仮設のリハビリ病院を医療機関の敷地に建てた。緊急措置だったため12月には閉鎖しなければならない。現在、移転計画を進めている。リハビリを担う人材育成、建設と運営に必要な資金の調達など課題は多い。広島と日本の人たちに今後も支援をお願いしたい。

 ―緊急支援から長期の復興支援に移っていますね。
 広島大のネパール人留学生を献身的に世話してくれた故江口国輝医師の名前を付けた記念病院。移転を必ず成功させたい。広島との縁を大切にしながら、地震で傷ついた人たちの長期的ニーズに応えていく。

(2015年8月18日朝刊掲載)

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