×

ニュース

島根原発 3号機 見えぬ先行き 統一性欠く大臣発言

 中国電力が建設中で、既にほぼ完成している島根原子力発電所(松江市)3号機の稼働が不透明になってきた。新政権は原発の新設は難しいとし、建設が進んでいる原発の扱いが政府内で揺れているためだ。中電や地元は困惑する一方、見直しを歓迎する声もある。(山本和明、樋口浩二)

 松江市鹿島町の島根原発の敷地内。1、2号機の北西に、3号機の建物がある。稼働中の2号機と変わらない姿だ。3号機の工事進捗(しんちょく)率は4月末時点で93.6%。中電は「ほぼ完成している」と説明する。

 東日本大震災を受け中電は5月、来年3月を予定していた3号機の運転開始を未定とした。震災の影響で制御棒を駆動する装置の点検が遅れており、福島第1原発の事故を受けた津波対策も必要。苅田知英社長は「可能な限り地元の理解を得る」と強調する。  島根3号機は稼働時期は未定なものの、本体工事に入っていない上関原発(山口県上関町)と違い、将来の稼働は前提との雰囲気が地元などにあった。

 3号機の稼働が不透明さを増したのは、野田佳彦首相の発言からだ。首相は2日、原発新設について「建設予定は14基あるが、新たにつくるのは現実的に困難だと思う」と語った。この14基には島根3号機も含まれる。

 政府内では6日も、原発新設をめぐる発言が相次いだ。島根3号機など工事が進む原発の稼働について、鉢呂吉雄経済産業相や、藤村修官房長官が発言したが、統一した見解は出されていない。

 これらの発言を受け中電や地元では戸惑いが広がっている。中電は「具体的な説明がなく、コメントできない」。島根県総務部の細田晃参事は「大臣の発言は重い。落ち着きを持った言葉を発してほしい」と求めた。

 一方、3号機の運転に反対している「さよなら島根原発ネットワーク」の杉谷肇共同代表は「建設を見直す動きは評価したい。脱原発路線には期待するが、まずは閣内統一を」と求めた。

 建設中の原発はほかに大間(青森県大間町)と東通1号機(同県東通村)がある。大間は進捗率が37.6%で震災後に工事を休止。東通はことし1月に着工し、同様に工事を中断している。島根3号機は総事業費約4500億円。福島の事故後、政府が認めれば国内で初めて新規稼働する可能性が高い。

島根原発3号機
 松江市鹿島町にあり、約20万平方メートルを造成して2005年12月に着工した。改良沸騰水型の軽水炉で出力は137万3千キロワット。同じ敷地内にある1号機の46万キロワット、2号機の82万キロワットを大きく上回る。運転開始は当初、今年12月を予定していたが、いったん来年3月に延期。さらに未定となった。

(2011年9月7日朝刊掲載)

年別アーカイブ