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社説・コラム

『記者縦横』 意思表示 学生の輪熱く

■東広島総局・新本恭子

 安全保障関連法案の「決め方」に危機感を持った広島大生が、東広島市内をデモ行進した。1カ月前の7月20日。学生が自らの心と他人の意見に向き合う姿を目の当たりにした。

 これまでデモへの参加経験はない。行動を起こしたのは、各自が疑問を抱いたからだという。違憲という声もある法案なのに議論が成熟しないまま成立させていいのか―。

 法案への賛否は問わず、「分からない」という人の参加も歓迎。「いろんな意見があって当然。デモを議論の場にしよう」と、ツイッターなどで輪を広げた。

 当日は約60人が参加。シュプレヒコールは上げず、順番にマイクを握り、思いを語って歩いた。スタイル自体ユニークだったが、印象的だったのはデモ前に寄せられた声に自分たちなりに答えていたことだ。

 「国立大の学生が国に意見するな」と言われた学生は「国のお金じゃなく国民のお金で学んでいる。国民のためになっていないと思うことには声を上げたい」と胸を張った。

 文部科学省の通知に触れた学生も。全国の国立大に人文社会学系の見直しを廃止に言及する形で求めた内容に関し、「社会学を学ぶ自分が社会にどう関わるか問われている」と真剣に語った。

 デモを終え「研究室にいたら出会えない人たちにハッとする意見をもらった」と言う学生がいた。「社会に意思表示し、考え、応答するのは楽しい」と話す彼らは頼もしかった。

(2015年8月21日朝刊掲載)

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