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広島・チェルノ・セミパラで調査 甲状腺がん 研究成果出版

 旧ソ連のチェルノブイリ原発事故の被災者医療や広島の被爆者の治療に長年従事する医師武市宣雄さん(67)=広島市東区=が、これまでの研究活動をまとめた「放射線被曝(ひばく)と甲状腺がん―広島、チェルノブイリ、セミパラチンスク」を出版した。

 南区で甲状腺クリニックを開業する武市さんは約20年前から、医療支援団体とともにチェルノブイリ原発事故の被害が深刻だったベラルーシ、ウクライナの汚染地や、旧ソ連の核実験場だったカザフスタンのセミパラチンスク(現セメイ)を60回以上訪問。検診や手術、現地の医師の指導に携わった。

 著書では、広島、チェルノブイリ、セミパラチンスクで被曝時年齢、性別、地域別に甲状腺がんがどれだけ発症しているかなどの調査結果や症例を紹介。教訓として迅速な避難やヨウ素剤服用、長期間の健康観察の必要性を説く。

 武市さんは「福島第1原発事故後、市民の放射線への関心は高い。専門的ながら読みやすさを心掛けた。正しい理解の助けになれば」と話す。

 現地調査をともにする広島大原爆放射線医科学研究所の星正治教授、同大大学院の安井弥教授との共著。今後も国際医療支援の活動や現地の検診、診断方法などを本にまとめる予定だ。

 武市さんは「研究成果は日本の支援団体の努力があってこそ得られた。培ったものを多くの人に還元したい」と話す。A4判、141ページ、1500円。渓水社刊。 (金崎由美)

(2011年9月8日朝刊掲載)

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