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社説・コラム

『記者縦横』 原発安全策 しっかりと

■東京支社・山本和明

 東京都港区の原子力規制委員会の近くに中国電力の分室がある。島根原発2号機(松江市)の再稼働の前提となる審査会合に対応する拠点だ。今月初めまで最大約50人が詰めていたが、今は10人程度に減った。

 福島第1原発と同じ沸騰水型の設備面の審査は、東京電力柏崎刈羽6、7号機(新潟県柏崎市、刈羽村)に集中することが決まり、島根原発は後回しになったからだ。中電の担当者の多くは本社や発電所に戻り、審査資料の準備を進めている。審査終了時期は見通しにくくなったが、中電はいったん立ち止まり、安全対策をしっかり考える機会にしてほしい。

 中電が審査を申請した2013年12月以降、65回にわたる会合を取材してきた。活断層や竜巻、火災などテーマは広く、資料が千ページを超す日も。政府が「世界最高水準」という新規制基準のチェックは厳しく、「もっと詳しい資料を」と規制委の注文が相次いだ。

 ただ審査会合のさなか、島根原発の低レベル放射性廃棄物の処理をめぐる虚偽記録問題が発覚した。地元の信頼を裏切る行為に、憤りが広がったのは当然だ。社員の安全意識が厳しく問われる。

 原発の再稼働に向け、たとえ規制基準を満たしても安全が保証されるわけではない。規制委の田中俊一委員長自身「絶対安全とは申し上げない」と説明する。再稼働への反対論が根強い中で、全社員が一丸となって安全性を追求する体制を築かなければ、とても住民の納得は得られまい。

(2015年8月28日朝刊掲載)

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