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「法的規制」活発に議論 国連軍縮会議閉幕 核なき世界へ具体的行動カギ

 被爆地広島で28日まで開かれた国連軍縮会議は、最終文書を採択できずに決裂した今春の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の「延長戦」の様相を呈し、活発化した。目立ったのは、最終文書案に沿って核兵器の禁止を含む法的規制の具体化へ前進を求める意見だ。反発もあった。核軍縮の停滞を避けるべく、参加した各国の外交官、専門家が「核兵器なき世界」に向けた具体的な行動を取れるかが今後の鍵となる。(水川恭輔)

 広島市南区のホテルであった会議2日目、NPT再検討会議を検証した会合が今回のハイライトだった。「決裂したが、核協議の『日没』ではない」。再検討会議の議長を務めたアルジェリアのタウス・フェルキ氏の発言を口火に、スイス、南アフリカ各政府の軍縮担当者は、法的規制をめぐる国連総会下での作業部会や国際会議の必要性、具体内容の選択肢を示した。

 核兵器の非人道性に焦点を当てて廃絶を急ぐ非核兵器保有国を指す「人道グループ」の面々。NPT再検討会議に続いてヒロシマでも、存在感を示した。

 しかし、保有国のフランス政府の元軍縮大使は「核抑止力の恩恵は多大。非人道性の訴えでは弱い」と反論。米国の軍縮政策担当者も、非保有国主導の軍縮議論をけん制した。緊張感も張り詰めた。

 非核外交の現場さながらに、被爆地でも繰り返された保有国と非保有国のやりとり。元外交官の小溝泰義・広島平和文化センター理事長は「多国間協議は意見の違いを理解して進めるしかない。その上で具体策を実現するにはリーダーシップが必要だ」と指摘する。

 その役割が期待される被爆国日本。9月の包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進会議の共同議長国を務め、来年4月には主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に先立つ外相会合を広島市で開く。ただ、日本外務省の担当者の討議を聴いた専門家からは「法的規制の議論への積極性に欠け、物足りない」との声も漏れた。

 3日間にわたる会議で最も大きな拍手が湧いたのは初日の広島県被団協の坪井直理事長(90)のスピーチだった。「被爆者として最後の一呼吸まで廃絶を諦めない」。この思いに応える努力が参加者に求められる。

(2015年8月29日朝刊掲載)

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