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過疎の波に原発是非「棚上げ」 山口の上関町長選無投票か 1日告示 現職だけ立候補表明

 凍結状態が長期化する中国電力上関原発の計画地、山口県上関町の町長選(9月1日告示、6日投開票)は、無投票の可能性が高まっている。現職柏原重海町長(66)が推進派の支援で4選を目指す一方、反対派は「賛否を乗り越え、原発財源に依存しないまちづくりで協力する」として候補者擁立を見送った。深刻な過疎高齢化を背景に、町長選で原発の是非をひとまず棚上げする初の事態となっている。(井上龍太郎)

 柏原氏は現在3期目。6月に4選を目指して立候補する意向を表明した。7月下旬には建設業や商工業など推進6団体の支援も決まった。

対決続きの構図

 一方、反対運動を主導する地元の住民組織全3団体は今月初め、候補者を立てない考えを明らかにした。上関原発を建てさせない祝島島民の会の清水敏保代表(60)は「準備工事の作業はストップしている。反対運動は継続するが、まちづくりを優先したい」とし、過疎高齢化の対策に取り組む必要性を強調した。

 町長選は1982年の原発計画浮上以降、10回目となる。これまでは上関原発計画の是非を争点に、推進、反対両派の候補者が対決する構図。推進派が67・4~53・8%の得票率で、9回続けて勝利してきた。

 2011年3月の福島第1原発事故直後、上関原発の準備工事は中断。半年後に実施された前回は柏原氏と反対派新人が争った。新規立地計画のある自治体で事故後初めての首長選として全国的な注目を浴び、集会やビラ配りなどの前哨戦が激しく繰り広げられた。あれから4年。静寂が町を包む。

 柏原氏は盆までに、ミニ集会を約20回開催。陣営によると、町財政や定住対策の説明に時間を割き、上関原発については「国の判断待ちの状態であり、あまり触れていない」という。

高齢化は県内一

 ことし1月時点の町人口は、計画浮上当時の半分以下の3190人。高齢化率53・26%は山口県内の全19市町で最も高い。

 医療や福祉分野への支出が膨らむ同町は原発以外の自主財源確保に向け、売電収入や観光振興が期待できる風力発電事業の検討に乗り出した。住民は選挙のたびに原発への賛否で対立し、町は疲弊した。自然エネルギーを活用したまちづくり像は、現状を克服したい両派を近づけてもいる。

 5日の立候補予定者説明会には、柏原氏の陣営だけが出席した。一方、町外の原発反対派に立候補を探る動きもある。同じ日程での町議補選(1人)には推進、反対両派から1人ずつが立候補を予定している。

(2015年8月29日朝刊掲載)

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