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「協力を」「選択肢なく」 上関町長選無投票 住民の思い交錯 山口

 上関原発建設計画をめぐって二分されてきた港町が、1982年の計画浮上以来、初めて対決を避けた。1日告示された山口県上関町長選。原発計画の推進派が推す現職柏原重海さん(66)が、無投票で4選した。「意識を変え、協力し合いたい」「選択肢がなく、意見が封じ込められた」。無投票の水面下で、住民の思いが交錯した。(井上龍太郎、久行大輝)

 上関原発は福島第1原発事故以降、凍結状態が続く。反対派団体は今回、国からの原発財源を想定しない町政運営を進める柏原さんを「一定に評価する」と主張。候補者擁立を初めて見送った。

 ただ、反対派の胸中は複雑だ。住民の大半が原発に反対する祝島。60代の主婦は「活発に論争した方が、町も活性化する。不満や批判が封じられた」。70代女性は「無投票で推進を容認したと受け止められたら困る」とくぎを刺した。

 見通しが不透明な原発計画の現状を受け、柏原さんは定住対策や観光振興の必要性を前面に訴えた。出陣式や街頭で推進姿勢を明示する場面はなかった。

 推進派の農業男性(61)は「選挙のたびに対立を激しくしてきた。今回の無投票を機に、プラス思考の協力ができるよう意識が変われば」と胸の内を明かす。

 4選が決まった後、同町長島の県漁協上関支店前であった祝勝会。柏原さんは「町民と行政とで心を一つに、この町をつくりたい」と意欲を述べた。根深い対立を乗り越えられるか否か。深刻な過疎高齢化に町ぐるみで立ち向かう指導力が問われる。

(2015年9月2日朝刊掲載)

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