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上関 原発新設問う 町長選告示 現新2氏立候補

 任期満了に伴う山口県上関町長選が20日、告示された。上関原発建設計画の推進派が推す無所属現職の柏原重海氏(62)と、計画に反対する元町議の無所属新人山戸貞夫氏(61)が立候補した。福島第1原発事故を受けて国のエネルギー政策が不透明になる中、原発新設の是非や、原発建設に伴う国の交付金が止まった場合の町づくりの在り方が争点となる。25日に投開票される。

 福島の事故後、原発の新規立地計画がある自治体の首長選は全国で初めて。

 3期目を目指す柏原氏は、原発関連の交付金に代わる財源はないとして推進の立場を維持しつつ「国の方針決定を待つしかない。原発問題がどうなろうと、町民が団結してヤマを乗り越えたい」と支持を求めた。

 反原発住民団体代表の山戸氏は、福島の事故による環境への甚大な影響を踏まえ、「財源のために住民の生活を犠牲にしていいのか。国が計画中止を決めるまで町民の声を発信し続ける」と第一声で強調した。

 中国電力による同町への原発建設構想は1982年に浮上。その後の8回の町長選は推進、反対の両派の候補が立ち、全て推進派が当選した。9度目の選択の結果は国の原子力行政に影響する可能性がある。19日現在の選挙人名簿登録者数は3213人。(久保田剛)

上関町長選立候補者(届け出順) 
柏原重海(かしわばら・しげみ) 62 無現②
町長(民生課長、原電対策室長)長島、熊毛南高

山戸貞夫(やまと・さだお) 61 無新
漁業(町議、反原発住民団体代表)祝島、島根大

丸数字は当選回数。
現職(主な経歴)▽現住所▽最終学歴。敬称略


上関町長選告示 「原発の是非」舌戦一変 頼らぬ町づくりも争点

 福島第1原発事故の後、原発建設地の埋め立て準備工事が止まった山口県上関町。20日告示の町長選は、推進派が推す無所属現職の柏原重海氏(62)と、「上関原発を建てさせない祝島島民の会」代表で無所属新人の山戸貞夫氏(61)の戦いとなった。建設中止を視野に入れた地域振興の在り方も争点に浮上。前回までとは違う様相の舌戦が幕を開けた。(久保田剛、堀晋也)

 6月の町議会定例会で「原発のない町づくりも考えておかなくてはならない」と述べた柏原氏。県漁協上関支店前の出陣式では、野田佳彦首相が原発新設は困難との見解を示したことを念頭に「われわれに大変な逆風が吹いている」と強調。「30年間、お互いが苦しんできた。国はこの重みをしっかりと受け止めてほしい」と険しい表情で注文した。

 柏原氏は3選を果たした場合、全町議12人と町の将来像を話し合う協議会を設置する方針。選挙カーで町内のほぼ全域を巡り、戸津地区では「やってくるであろう困難な道を、力を合わせ乗り越えたい」と団結を求めた。

 山戸氏は同町室津の事務所で第一声。「世論は変わっても、上関は厳しい状況」と危機感を示しつつ「限りなく建設の可能性はなくなっている。原発ではなく、町民の努力による町づくりが問われている」と力を込めた。

 建設地から約4キロ沖にあり、住民の大半が計画に反対している離島、祝島に渡って出陣式。ともに運動してきた支持者を前に「上関を止めれば日本全体の原発建設を止められるという大きな役割がある。生活を守るため、地道な姿勢を貫きたい」と訴えた。街頭演説では「原発をきっぱり捨てる町政に取り組んでいこう」と呼び掛けた。

 選挙戦の初日は風雨に見舞われた。「仮に原発計画がなくなった場合どうするのか、具体的な方策も示してほしい」。60歳代の女性は求めていた。

(2011年9月21日朝刊掲載)

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