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福島 被曝と闘う母たち 鎌仲監督 ドキュメンタリー「小さき声のカノン」 助け合い・苦悩に迫る

 東京電力福島第1原発事故による被曝(ひばく)にどう向き合えばよいのか―。ドキュメンタリー映画「小さき声のカノン」は、その答えを探るため、福島とチェルノブイリ原発事故の被災地の母親たちを追った。「子どもたちを被曝から守りたい」。鎌仲ひとみ監督は願いを込める。(余村泰樹)

 400時間以上カメラを回した鎌仲監督。子どものために行動を始めた福島の母親たちを映し出す。二本松市では、全国から届く支援の野菜を分け合うために手を携え、線量の高い空き地の除染にも取り組むグループが誕生。「私たちはただの泣き虫のお母さん。それでも何かできる」。生き生きとした姿が印象的だ。

 一方、甲状腺に膿胞が見つかったり、夫と離れ離れの生活に将来を描けなかったり。不安に押しつぶされそうな心情もすくい取る。

 「福島にとって一番参考になる」と、ベラルーシでも取材を重ねた。甲状腺がんや心臓病、貧血…。チェルノブイリ事故から四半世紀以上たった今も、住民の健康被害が続く。

 そんな中、ベラルーシが国策で続ける取り組みにスポットを当てる。年間被曝線量が1ミリシーベルトを超える地域の子どもを一定期間、放射能汚染のない土地で過ごさせ、安全な物を食べさせる「保養」だ。内部被曝の数値が大きく減少する結果を紹介しながら「被曝を抑え、病気の花が開くのを防ぐ方法はある」と語る。

 これまで「ヒバクシャ―世界の終わりに」(2003年)「六ヶ所村ラプソディー」(06年)「ミツバチの羽音と地球の回転」(10年)と核汚染や原発の是非を描いてきた鎌仲監督。福島の原発事故に「敗北感を覚えた」と打ち明ける。

 放射線量の高い地域への帰還を促す方針を示すなど、被曝の影響を軽視するかのような政府の姿勢に憤りを隠さない。「諦めるとますます被曝してしまう。福島の現実は厳しいけど、リアルに見つめ、一人一人が声を上げることが大切。小さくても集まれば本質的な変化が起きる」

 広島市西区の横川シネマで21日まで上映。

(2015年9月5日朝刊掲載)

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