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社説・コラム

『書評』 郷土の本 幼年画 民喜がつづる被爆前の広島

 小説「夏の花」で知られる広島市出身の被爆作家、原民喜(1905~51年)の初期の短編集「幼年画」=写真=が、単行本として刊行された。ノスタルジックな戦前の作品が中心。戦後につながる民喜の文学世界に触れることができる。

 短編集は、自死した民喜が表題のタイトルでまとめていた作品9編に、同じ頃発表された短編「潮干狩」を加えた。1編を除いて、いずれも昭和10年代に文芸雑誌「三田文学」などに発表されている。

 「不思議」は、少年の雄二が父に連れられて宮島を訪れるストーリー。いずれの作品も、民喜が幼少期を過ごした広島の光景が色濃く反映されている。

 高松市の出版社サウダージ・ブックスが、瀬戸内ゆかりの優れた文学作品を復刊する企画の一環で出版した。浅野卓夫代表(40)は「被爆前の広島の姿を、文学によって記録した貴重な作品群だ」と話している。166ページ、1728円。

(2015年9月6日朝刊掲載)

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