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社説・コラム

どう見る安保関連法案 安保関連法案に反対するママの会・広島 近松直子さん 

戦争ない未来 子どもに 少しずつでも憲法学ぶ

 集団的自衛権の行使を認める昨年7月の閣議決定のニュースを見て、戦争をしないはずの日本があっけなく変わってしまうようでショックだった。その前には特定秘密保護法が成立。「子どもの未来にとって何か怖いことが始まっている」という不安が母親の間に広がっている。

定義があやふや

 働きながら小学2年の長男(7)と保育園児の長女(6)を育てる。東京で始まった「ママの会」設立の動きが全国に広がる中、「だれの子どももころさせない」との会のキャッチフレーズに共鳴。友人たちと7月、広島での会を立ち上げた。政党色はない。

 法案を読んでも「存立危機事態」など言葉の定義があやふやで、どうとでも解釈できそう。私が中学生の頃、日本は米国のイラク戦争をすぐに支持し、開戦の理由だった大量破壊兵器がなかったと分かっても検証さえしなかった。その過去を考えても、いつか米国の戦争に関わるようになるのでは、と思ってしまう。

 将来戦争になれば、戦場に行くのは今の子どもたち。殺すのも、殺されるのも誰かの子ども。子どもを産み育てているママだからこそ黙っていられないし、一緒に声を上げられる。

普通の人の代表

 母親たちが参加しやすいよう、会には役職を設けず、インターネットの交流サイトを軸とした緩やかな連携を特徴とする。8月30日に広島市中心部で実施したデモ行進には、ネットやチラシでの呼び掛けに応じ、母親や若者たち約350人が参加した。

 ママたちにとって、発言することのハードルはまだ高い。家族がいい顔をしないケースもあるし、私たちも街頭やネットで「中国にどう対抗するんだ」「資源の確保はどうする」と厳しく批判されている。

 私たちは、国際政治や憲法に詳しくないけれど、戦争になればみんな無関係ではいられない。だから「分からなくても、まずは話そう」というスタンスでいる。その上で、少しずつでも学ぶため憲法についての気軽な勉強会も開こうと思っている。政治について話したり学んだり、行動したりすることが、もっと普通になればいい。

 戦争をしない現在は、過去の誰かが築いてくれた「未来」でもある。私たちママは普通の人の代表であると思っている。国会審議は大詰めだけれど、世の中の空気を変えれば、法案成立を止められると信じている。まだ議論に参加できない子どもたちの代わりに、母親の一人、普通の市民の一人として、未来への責任を果たしたい。(明知隼二)

(2015年9月10日朝刊掲載)

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