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ヒロシマ「軽視」に怒り 藪中前次官「尚早」発言

  2009年11月のオバマ米大統領来日をめぐり、当時の藪中三十二外務事務次官が「広島訪問は時期尚早」との見解を米側に示したことが「ウィキリークス」で明らかになった26日、被爆者からは怒りの声が相次いだ。

 広島では同年4月のプラハ演説で「核兵器なき世界」を唱えたオバマ氏が広島を訪問し、核兵器廃絶のメッセージを発するよう期待が高まっていた。

 広島県被団協の坪井直理事長は「原爆投下国の大統領として被爆の実態に触れ、廃絶への決意を新たにして」と期待した一人。「自国の被爆者の思いよりも、米国への配慮ばかり重視するのが日本の外交なのか」と憤る。

 もう一つの県被団協(金子一士理事長)の大越和郎事務局長は、「被爆地の願いを外務省が妨害するとはとんでもない。原爆症認定訴訟でも明らかなように原爆の被害を小さく見せようとする国の姿勢の現れだ」と話す。

 元外務官僚で広島市立大広島平和研究所の浅井基文前所長は、核兵器を積んだ米艦船の日本寄港などを認める日米政府の「核密約」が明らかになった時期と重なると指摘。「オバマ氏に過度な期待を抱く広島への訪問で国内の反核世論が高まれば、密約問題への対応にマイナスと考えた可能性がある」と分析する。

 オバマ氏の名を冠した「オバマジョリティー」キャンペーンを秋葉忠利前市長時代に展開した広島市は「事実関係を確認できずコメントできない」としている。(金崎由美)

(2011年9月27日朝刊掲載)

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