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社説・コラム

どう見る安保関連法案 広島大大学院・秀道広教授 他国と連携…平和のため

「戦争法案」は論理が飛躍

 差し迫った軍事的脅威に国家としてどう対応するかが今、最も大事なことだ。安全保障関連法案は、民主的で自由な世界の国々と協調し、日本の平和と繁栄を守る手段になる。

 軍備を拡大する中国など、ここ20、30年で日本を取り巻く脅威は格段に強まった。その半面、現実に日本を守っている米国の力は相対的に低下した。米国はもちろん、基本的な価値観を共有する他国とも連携しないと、もはや日本の平和は守れない。米国やそういった他国がやむを得ず自衛のための武力行使に踏み切る際、日本だけが「戦えません」では、国際社会の信頼を得られない。

脅威に対応必要

 専門分野はアレルギーなど皮膚科学だが、憲法や安全保障問題に詳しい。憲法改正の是非を国民に聞くため衆院憲法調査会が2004年に広島市で開いた公聴会では、公募に応じて意見陳述し、「自衛隊を軍隊として整備すべきだ」などと主張した。

 安保関連法案は憲法改正を踏むのが筋との意見もあるが、憲法9条は自衛のための軍事力行使を否定していないと解釈できる。集団的自衛権の行使は、現行憲法の下でも可能だと考える。国連憲章でも自衛権を「個別的」であれ「集団的」であれ、正当な権利と位置付けている。

 憲法学者の中には、集団的自衛権の行使は違憲だとした上で、憲法を守るのが国の最終目標のように主張している人がいる。私はそういう立場を取らない。現実に則し、軍事的脅威に対応できる態勢をつくるべきだ。中長期的には、軍隊の位置付けを明確にするなどの憲法改正も必要だ。

国会審議は茶番

 国会審議は大詰めを迎え、国内各地で法案の廃案を訴えるデモが熱を帯びている。成立への反対は根強い。

 今回の法案を「戦争法案」と非難する人は、あまりに論理が飛躍していないか。海外での武力行使を想定することイコール「戦争開始」ではない。武力をどう使わずに済むのかを、外交交渉や経済的な駆け引きで探り、平和を実現するのが安全保障のあるべき姿だ。武力行使の可能性を最初から否定すれば、日本への他国の支配を誘発する結果を招きかねない。

 安保関連法案をめぐる国会審議が茶番に映るのは、閣僚が自分の言葉で語らず、官僚の用意した文句をそのまま読んでいるからだ。国際的な協調を進め、日本の平和を築こうとする政府の方向性は正しい。安全保障環境は厳しさを増し危険は差し迫っている。国民はその状況を理解し、法案成立を急ぐ必要がある。(樋口浩二)

(2015年9月12日朝刊掲載)

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