×

ニュース

業務管理の改善を約束 島根原発虚偽記録問題 中電、規制庁や県に報告書

 中国電力は11日、島根原子力発電所(松江市鹿島町)の低レベル放射性廃棄物の虚偽記録問題で、原因と対策をまとめた報告書を原子力規制庁と島根、鳥取両県、原発30キロ圏6市に提出した。組織的関与はなかったとし、業務管理やコンプライアンス(法令順守)の改善を約束した。

 報告書は、水量計の調整を担当者が怠ったうえ、点検記録を捏造(ねつぞう)。上司も作業の状況を確認・把握していなかったことなどが原因と指摘した。再発防止策として、点検を一元管理する統合型保全システム(EAM)をほぼすべての機器に適用することや、複数での監査を徹底することなどを盛り込んだ。

 島根県庁では、清水希茂副社長が溝口善兵衛知事に報告書を提出した。「業務運営の改善などを確実に進め、信頼回復に努めたい」と陳謝した清水副社長に、溝口知事は「県の安全対策協議会や県原子力安全顧問の会合で内容を検討したい」と応え、来週中に島根原発に県職員を派遣する考えを示した。松江市で提出を受けた松浦正敬市長は「今回は極めて悪質。後がないという気持ちでやってもらいたい」と述べた。

 問題は、日本原燃の監査で指摘され、ことし6月に発覚した。その後、弁護士や専門家ら第三者を交え、原因分析を進めていた。

 中電はこの日、苅田知英社長はじめ5人が月額報酬の1割(1カ月間)を自主返納すると発表した。(川井直哉)

【解説】意識改革の徹底を

 中国電力島根原発の低レベル放射性廃棄物をめぐる虚偽記録。問題の発覚後、島根2号機の再稼働について審査する原子力規制委員会の田中俊一委員長は「比較的軽微。重要な問題を起こすような案件ではない」と語った。こうした認識は原発の信頼性が揺らいでいる現状を甘く見ていると言わざるを得ない。

 中電が11日に公表した最終報告書によると、虚偽記録は担当者だけが行ったという。問題の原因には、原発機器約300点が一元管理システムの対象から外れ、上司も確認を怠ったことなどを挙げた。

 そのため再発防止策としては、管理システムの強化などを並べている。人為ミスを完全になくすのは難しい事実を踏まえると、中でも重要になるのは社員の意識改革の部分だろう。

 今回の問題も担当者がミスを隠さず、正直に話していれば、影響は小さかったはずだ。ミスの報告をしづらい企業風土があるとすれば、変える必要がある。

 問題の発生は2006年の土用ダム(岡山県)のデータ改ざんや、10年の島根原発の点検不備の再発防止を進めているさなかだった。原子力規制委とは違い、中電自らは問題を重く受け止めているとしている。4回目の「虚偽」はあってはならない。(河野揚)

(2015年9月12日朝刊掲載)

年別アーカイブ