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戦闘機体験 初めて証言 搭乗200~300回 生死は紙一重 広島県世羅 田中さん「今話さねば」

 戦時中に戦闘機に乗った世羅町小世良、田中光政さん(89)が13日、町内で講演し、当時の体験を初めて語った。戦後、証言は控えてきた。しかし、終戦から70年が過ぎて自身も年を重ね、国会で安全保障関連法案をめぐる審議が進む中、「今話さなければ」と決意したという。

 田中さんは同町出身。1943年4月、17歳で岩国海軍航空隊に入隊し、長崎や千葉などの航空隊で零式艦上戦闘機(ゼロ戦)や水上戦闘機に乗った。終戦は郡山海軍航空隊(福島県)で迎えた。200~300回搭乗したという。

 敵との戦闘では「千メートル上空から急降下して機銃や爆弾を発射し、そのまま離れる一撃離脱作戦が基本だった」と説明。「一騎打ちしたこともあった。パイロットの顔が見えた」と話した。編隊を組んだ戦友が撃墜されたことや、機銃で横から撃たれて座席後部の通信機を貫通した経験などに触れ、「生死は紙一重だった」と述べた。

 田中さんは大田庄歴史館(同町甲山)で開催中の企画展「平和への証言」展の関連行事で、約40人を前に証言した。「特攻隊へ配属を希望したこともある。兵隊で死ぬのが当然と思っていた」と述べ、平和の大切さを強調。安全保障関連法案について「戦争への道につながる懸念のある法律を制定してはいけない」と力を込めた。(与倉康広)

(2015年9月15日朝刊掲載)

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