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被爆者医療 福島で講演 高陽第一診療所の吉田所長

 「被爆者の心に沿う医療」を掲げる高陽第一診療所(広島市安佐北区)の吉田良順所長(61)が10日、福島第1原発事故を受けて福島市で開かれる市民集会で講演する。同診療所で地域医療に携わって30年。被爆者と向き合ってきた体験を語り、被災者を勇気づける。

 診療所は1972年に開設。吉田所長は81年5月から勤務し、同10月から所長を務める。目指すのは、被爆者がいつでも胸の内を話せる「敷居のない医療」。被爆体験の聞き取りや日帰り旅行などの交流を通じて信頼関係を築いてきた。

 「二度と繰り返してはならないという被爆者の思いへの共感が基本だ。ちょっとした健康相談にも乗ることが、被爆者の安心につながる」と吉田所長。被曝(ひばく)への強い不安を抱く福島の人にも思いを寄せる。

 「被爆者の生き方を参考にしてほしい」。今回の福島での講演ではそんなメッセージを送る。過剰な健康不安に陥らないよう、被曝した人の思いをくんで助言と医療を提供できる受け皿を現地に設ける必要性も訴える。

 また、被爆者にがん患者が比較的多い実態から、内部被曝の危険性を伝えるつもりだ。「リスクを真正面から受け止め、どう健康管理していくかが問われている」と話す。(野田華奈子)

(2011年10月6日朝刊掲載)

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