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「国民を無視」「審議不十分」 安保法案参院委可決 中国5県地方議会で批判相次ぐ 山口県議会は支持の声も

 日本の安全保障をめぐる法体系についての国会審議は17日、大きな転換点を迎えた。安全保障関連法案の慎重審議を安倍晋三首相や国会に求めていた中国地方5県の地方議会からは、「国民の理解なき進め方」「法案は違憲」などの批判が相次いだ。一方、首相のお膝元、山口県議会からは「可決は当然」と政府を支持する声が上がった。

 「われわれの訴えが一地方の声ではなく、多くの国民の声であることは連日のデモや世論調査で明らか。受け止めてもらえず残念だ」。6月に法案反対の意見書を可決した庄原市議会の堀井秀昭議長は憤った。

 庄原市議の有志は、県議や市民と法案反対を訴える組織を結成。約1万3200人分の署名を添えて法案撤回を求める要望書を安倍首相宛てに出した。参院特別委は採決に先立ち15、16日に公聴会を開いたが「審議に生かされたとは思えない」と語気を強めた。

 同じく6月、法案反対の意見書を可決した島根県津和野町議会。沖田守議長も「国民の声に耳を傾けず強引に審議を進めた」と与党の姿勢を批判し、「憲法違反という点が一番の問題だ」と強調した。

 参院での審議時間は計約100時間に達したが、「拙速」との声は根強い。法案の「熟議」を求める意見書を今月可決した安芸高田市議会の山本優議長は「審議は不十分。数の論理で押し通すのは残念」。反対の意見書を6月に可決した世羅町議会の中村幸雄議長は「国民が納得できるまで踏み込んだ議論を展開してほしかった」と振り返った。

 今後も働き掛けを続けるとの声も。6月に可決した慎重審議を求める意見書を提案した竹原市議会の脇本茂紀市議は「署名活動や街頭演説を通じ、廃止されるよう粘り強く訴える」と強調。安芸高田市議会で意見書を提案した熊高昌三市議は「これからも、国民の理解が進むよう中身を再検証する柔軟な姿勢が政府に求められる」と話した。

 一方、中国5県で唯一、法案成立を求める意見書を可決した山口県議会。意見書の提出者の一人である島田教明県議は「審議は十分重ねたので可決は当然」と評価。「軍事的脅威が国境を越える時代。国民の生命や財産を守り抜くには新たな法制が必要だ」と力を込めた。

(2015年9月18日朝刊掲載)

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