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社説・コラム

平和の国 どう守る 安保法成立 暴挙に憤り/政治不信/脅威増し必要

 多くの憲法学者が憲法違反と指摘し、採決の最終局面で混乱した中、集団的自衛権の行使を解禁する安全保障関連法が19日成立した。法の成立や一連の国会審議をどう見たか。中国地方の市民に聞いた。

 広島市東区の派遣社員寄能ひろ代さん(25) 安保法は反対。知り合いの自衛隊員は「人助けをしたくて自衛官になった。戦うためではない。今後が不安」と言っていた。安保法が身近な問題と思うようになった。SEALDs(シールズ)のように若者が反対の声を上げ、私たちの意見を代弁してくれたのがうれしかった。

 山口市の農業田中豊さん(65) 数にまかせた暴挙で、強い憤りを感じる。8月下旬に国会前でのデモに参加した。会社員や子連れの母親が多く参加していた。「戦争に行くかもしれない」という恐怖心が、人々の心を突き動かしたと感じている。長い戦いになるかもしれないが、安倍晋三首相の地元から反対の声を上げ続ける。

 東広島市の主婦谷元恭子さん(48) 米国に先に約束し、焦って安保法を成立させたように感じる。こんなに急ぐ必要があったのか。本当に国民を守るための法律なのかと思ってしまう。ごり押ししても、その時だけやり過ごせば、次の選挙で落ちることはないと思っているのではないか。

 福山市の無職川崎誠さん(70) 安倍首相は丁寧な説明をすると言っていたが、できていない。デモが各地で起きているのに国民の声を全く聞いていない。終戦の年の8月、福山空襲に遭った母の体験を聞き、戦争をしてはいけないという思いは強い。これまで何度もデモや集会に参加した。これからも続ける。

 庄原市の嘱託職員実国義範さん(64) 議員の数が多ければ何でもできる、というやり方に危うさを感じた。多くの若者や主婦が法案反対の声を上げたのは、危機に陥った民主主義や立憲主義を取り戻そうとの表れだろう。今後の政治の流れが変わってくると期待している。

 松江市の主婦斉田知子さん(59) 自分自身も安保法の中身をよく知らず、政府は国民への説明が不足していた。これだけ国民が反対している法を急いで決める必要はない。国会の混乱ぶりを見て政治不信が高まった。

 広島市南区の主婦石黒敬子さん(64)  明らかな憲法違反。独裁政治がまかり通ってしまった。昔は自民党の中に「健全な保守」がいたが、今は安倍首相の言いなりの人ばかり。今回、若い世代が「おかしい」と声を上げた。法が成立した絶望とかすかな希望が交錯している。じわりと国の形が変わってくるはず。その変化に敏感に反応し「NO」の声を上げたい。

 周南市の会社社長森田和夫さん(73) 安保法の成立を待ち望んでいた。北朝鮮や中国に対する抑止力となる。野党は憲法違反だと主張するばかりで対案を出さなかった。採決強行もやむを得なかった。徴兵制を導入し、市民が戦地に行くわけではない。戦後70年たち、時代に合わせた法が必要だ。

 尾道市の会社員村上大起さん(32) 国を守るために必要な法律。米国に守ってもらうだけでは都合がよすぎる。選挙で選ばれた議員の多数が賛成したのだから当然の結果だ。反対派議員の声が多く聞こえてきたが、賛成派の議員ももっと声を上げてほしかった。

 呉市の産業廃棄物処理業宇山登輝之里さん(50) 周辺諸国の脅威が増す中で安保法は必要。戦争をしないための法整備なのに、意味を理解している人は少ないのではないか。野党が勝手に「戦争法案」と言って中身をすり替え、議論を長期化させた。強行採決も妥当だった。

 広島市西区の無職中元弘之さん(76) 自分の国は自分で守るのが正しい姿だ。与党の強行採決が批判されているが、野党の強行阻止も目に余った。安保法そのものへの反対より、今国会で成立を急いだことへの反対が多い。与党はもっと時間をかけ国民に説明しても良かった。

(2015年9月20日朝刊掲載)

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