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福島の現実 避難者に学ぶ 井海さん家族囲む集い 呉

農業や食 考える映画も

 東京電力福島第1原発事故で一部が警戒区域になった福島県田村市から呉市安浦町に移り住んだ井海幹太さん(41)の家族を囲む集いが16日、呉市である。福島の現状を考えようと呉市の若者が企画した。

 井海さんは、妻の緑さん(35)、長男の麦君(5)、次男の作君(2)の4人家族。広大な土地を求めて2006年、宮崎県から田村市に移り、原発から30キロ余りの山あいに居を定めた。山の木で自宅を建て、太陽光パネルで電力を自給。ガスはなく、水は井戸から。畑を耕す暮らしだった。

 生活は3月11日、一変した。被害はほとんどなかったが、原発で何かが起きたと伝わってきた。「育てたものを食べられなくなるかもしれない」。状況は刻々と悪化。翌日、最小限の荷物を車に積み、井海さんの実家がある静岡市を目指した。

 田村市の家は警戒区域、緊急時避難準備区域の外だが、安全への懸念は消えなかった。「自然豊かな土地で再び畑を耕しながら暮らしたい」。知人などの紹介で安浦町に9月中旬に移住。新たな一歩を踏み出した。

 集いは呉市三条の常石佳沙(かずな)さん(25)たち4人が「呉からは見えにくい福島の現実を、井海さん一家を通して考えてほしい」と企画した。井海さんも「原発に頼る生活は事故と密接に結びついている」とし、危険と隣り合わせの豊かさ、快適で便利な暮らしに潜むもろさを語る。

 午後2時~5時半、本通3丁目のトゥモロービル3階。飲み物や手作り菓子付きで500円。農業や食を考える記録映画「未来の食卓」のDVDも上映する。 (小林可奈)

(2011年10月13日朝刊掲載)

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