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連載・特集

安保法成立 地域の波紋 <3> 主権者として

デモや街頭活動 広がる 主婦・学生ら危機感

 反対を訴える声が全国で巻き起こっている安全保障関連法。中国地方5県でも、各地でデモ行進や街頭活動があった。主婦や大学生、会社員…。これまで政治的な活動が目立たなかった人たちが声を上げた。

 「私たちは物事を政治家任せにし過ぎてきた」。「安保関連法案に反対するママの会・広島」のメンバーの主婦八代佳代子さん(39)=広島県安芸郡=は、8月末から約1カ月間の活動を経て、こう思う。与党の数の力で法は成立。悔しさも感じるが、同時に「市民の力で民主主義をつくっていく始まり」と感じている。

 法案が参院平和安全法制特別委員会で採決された17日、広島市中心部であった抗議のデモ行進。約900人の参加者の中に、娘3人を連れた八代さんの姿があった。「子どもの手に武器は持たせない」―。はしゃいで駆け回る幼子たちを時にたしなめながら、声を上げた。

支持政党はなし

 社会への関心はある方だと自任していたが、特定の支持政党はない。主婦として3児の子育てに専念する生活だった。今回は、日本の未来を担う世代への影響が大きいと感じ、知人に誘われて参加した。メンバーにはフルタイムの会社員もいれば主婦もいる。仕事や家事の合間に情報交換し、活動した。子連れデモへの批判があることも知るが「おかしいと思ったことに声を上げる母親の姿を見せたい」と、あえて親子で街頭に出続けた。

 少し前まで「正直、怖かった」デモや政治的な行動。今は「自分が政治に対して声を上げることができるんだ、という充実感がある」。今後も主権者として、安保法制の廃止に向けた運動を続ける。

 「政治と関わるのは『特別なこと』じゃない」。広島大大学院総合科学研究科博士課程前期2年の永井悠大さん(25)は、そう考える。安保関連法案に反対する広島大の学生有志の一人。7月20日、ツイッターや無料通信アプリLINE(ライン)で呼び掛け合って約60人が集まり、東広島市内を演説しながら歩いた。

自分自身の問題

 友人と「安保関連法案の審議って、何か変だよね」と語り合ったことが、呼び掛けるきっかけになった。総合科学部4年の木下虹介さん(22)は「これまでは政治に関心はあったけれど、なかなか自分自身の問題にはなっていなかった。今回、勉強を重ね、ラインで友人をデモ活動に誘ううち、一気に自分に引きつけられた」と振り返る。学生たちは、今後も政治や選挙について日常的に友人と意見を交わし続けるという。

 広島修道大の野村浩也教授(社会学)は、デモなどの表現活動を選挙と並ぶ民主主義の要だと指摘。「戦争になれば、若者や子どもが最も危険にさらされる。当事者が危機感を持って動きだしたことは、民主主義がようやく機能し始めたとみるべきだ」と説く。安保関連法案に対して広がった活動は、主権者の新たな動きの「始まり」となる可能性もある。(明知隼二、新本恭子)

(2015年9月22日朝刊掲載)

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