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深い思考促す現代美術 ヒロシマ・アート・ドキュメント 想像力かき立てる表現

 国内外のアーティストが「ヒロシマ」をテーマに被爆地へ集う現代美術展も、今年で22回目。広島市中区の旧日本銀行広島支店で開かれている「ヒロシマ・アート・ドキュメント2015」は、4カ国から6人と1団体が参加し、多彩な切り口で、見る者の想像力をかき立てている。

 献花や献茶などパフォーマンスによる表現はすでに終了し、インスタレーションや映像を中心に、計6作品を見ることができる。

 ジャン=リュック・ヴィルムート(フランス)「タイムス サイエンス」は、巨大な壁面にチョークで克明に刻まれた年輪。中央に配された三つの時計は、広島・長崎への原爆が投下された時刻と、福島第1原発事故を招いた東日本大震災の発生時刻を指す。その時刻から広がる年輪の前に立つと、歴史の連続性や出来事の関係性を思わずにはいられない。

 パリ在住のセシール・アートマン「堆積物と空隙(ウォール街、広島)」は一見、抽象的な文様を重ねたようだが、壁など身近な事物の一部をフォーカスしたりモノクロームを反転させたりした写真によるインスタレーション。ともにパリ在住の映像作家ジュディット・カエンと江口方康が共同制作した2点のビデオ作品は、既成概念を激しく揺さぶり、他者への共感や記憶の共有についても問い掛けてくる。

 米国による原爆投下への批判を、インドの神話と織り交ぜ、物語風に描いたハンス・ヴァン・ハウエリンゲン(オランダ)の「おい、パールト、原子爆弾はどうする?」も、インパクトがある。

 国内外の美術関係者でつくる「クリエイティヴ・ユニオン・ヒロシマ」(伊藤由紀子代表)の主催。20年以上続く活動について伊藤さんは、「ヒロシマをテーマに投げ掛けると、作家はすごい数の本や資料を読み、リサーチして、意図をもって作品にする。感じ方はそれぞれだと思うが、見る側も深く思考し、次のステージにつなげてほしい。ヒロシマにはその磁場があると思う」と話す。

 入場無料。開館は午前10時~午後5時。10月3日まで。=敬称略(森田裕美)

(2015年9月24日朝刊掲載)

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