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社説・コラム

女子サッカー 国民の光に アフガンの連盟 メヘリ委員長に聞く

タリバンが禁止 影響今も 復興の歩み 私たちも続く

 内戦や米国による軍事介入に苦しんできたアフガニスタンで、スタートしたばかりの女子サッカー。男性優位の社会ゆえに女性に対する偏見・差別や、治安の悪さが、活躍を目指す女子代表チームの「壁」となっている。それでも、練習に打ち込む選手の姿は、自由を求める国民を励ましてもいる。国連訓練調査研究所(ユニタール)広島事務所の招きで、代表チームとともに広島市内で研修したアフガニスタンサッカー連盟の女性委員長、ゾハラ・メヘリさん(28)に課題や抱負を聞いた。(山本祐司)

 ―今の代表チームを取り巻く問題は何ですか。
 女性の選手やコーチ、審判が不足していることだ。アフガン国内は治安が悪いため、子どもが外出したりスポーツをしたりすることを家族が許さない。特に女子には、その傾向が強く、女性がスポーツをするのは難しい状況だ。タリバン政権下では、スポーツをすることさえ禁じられていた。最近も、バレーボールをしていた子どもが、タリバンに殺される事件があった。  状況は徐々に良くなってきているものの、いまだ根深い。サッカーが好きなのに練習できない、戒厳令が出て外に出られないので定期的な練習ができないといった現状がある。

指導者が不足

 女性の指導者がいない問題にも直面している。選手のモチベーションをさらに高め、専門的な技術を教え、個人の持っている技をさらに伸ばすことのできる人材を求めている。サポーターや、スポンサーが少ないのも課題だ。  ―サッカー連盟は、どんな活動をしていますか。

 国内34都市のうち、女子チームのある首都カブールなど8都市で活動している。このうち4都市では毎年、トーナメントを開催している。今は他の都市でも女子サッカーが発展するよう、力を注いでいるが、治安が悪いため難しい。選手育成のトレーニング、国外への遠征や試合の計画を立てるのが私の仕事だ。

「平和の象徴」

 ―この仕事を始めた理由は何ですか。
 女性が何事にも挑戦できる社会をつくりたかったからだ。アフガンでは、サッカーが唯一、人々を笑顔にする「幸せと平和の象徴」。もともとは国際機関で、女性の地位向上に関する仕事をしていたのだが、今のポストが空いたので応募した。サッカーの知識はそれまでに、女子のクラブに入って学んでいた。デスクワークをしながら、選手とコミュニケーションを深められるので、やりがいがある。サッカー連盟の人たちも協力してくれる。

 ―被爆地広島での研修の感想を聞かせてください。
 このような支援が今後も続くことを願っている。なぜなら、女子チームのモチベーションを高め、プレーする選手個人の技術を伸ばすことができるからだ。そして、70年前の原爆投下で廃虚になった広島の街が、これほど復興していたのも驚きだった。日本が歩んだ平和へのステップを、アフガンも同じようにたどり、平和を実現したい。

 ユニタールや美しく文化的な街広島、親切で温かいもてなしをしてくれた市民、研修が成功するよう協力してくれた多くの人たちに、感謝を申し上げたい。

(2015年9月28日朝刊掲載)

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