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社説・コラム

社説 国連の新目標 問われる先進国の実践

 飢餓や貧困の撲滅へ、国際社会は結束できるだろうか。国連総会に合わせ、「持続可能な開発目標」を定めるための国連サミットが開かれた。

 2000年に設けた「ミレニアム開発目標」を深化させたものだ。21世紀に入り、地球規模の環境悪化や難民の増加など待ったなしの課題が増えてきた。危機感と実行力が各国首脳に今こそ求められる。新たな目標の成否は国連そのものの存在意義にも関わるだろう。

 第2次世界大戦の教訓から生まれた国連はことし創設70年を迎える。世界大戦こそ起きなかったが、地球上では地域紛争や内戦が今も絶えない。その調停や解決が期待されながら、大国のエゴもあって機能不全に陥っているのが現状ではないか。

 その中で貧困や格差への対応も不十分と言わざるを得ない。このままでは世界は瓦解(がかい)するのではないか。再び国連の旗の下で政治的対立を超え、さまざまな問題を乗り越えるときだ。

 「私たちに平和と繁栄、教育の機会を与えてください」。昨年のノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんは、サミットに集まった約130カ国の指導者らに訴えた。その言葉を追うように全会一致で採択した新目標は17分野169項目に上る。飢餓や貧困への対策や教育の保障、持続可能な消費と生産など、多岐にわたる。

 従来のミレニアム目標が主に途上国に焦点を当てたものだったのに対し、新目標は先進国に取り組みを求めた課題も多い。廃棄食品の半減や温暖化対策などは当然だろう。さらに所得格差の縮小や女性差別の撤廃にも改革と行動を迫っている。

 ただ国内の法律や制度を見直し、国連に達成状況を報告するよう促してはいるが条約のような法的拘束力はない。実効性は各国の姿勢に懸かってくる。

 何より飢餓にあえぐ人々の救済に全力を注いでもらいたい。国連によると極度の貧困にあえぐ人口割合は、1990年比で半減できたという。だがアフリカや西アジアなどでは飢餓人口の半減や、乳幼児や妊産婦の死亡率の引き下げなどについて目標達成は遠いままである。

 特にサハラ砂漠以南の南スーダンや中央アフリカなどの国々では大きく遅れている。先進国が豊かな社会を謳歌(おうか)する一方で救える命を救えないでいる事実を、国際社会全体でもっと重く受け止めねばならない。

 いまアフリカ大陸では大国による資源獲得や市場囲い込みの競争が繰り広げられている。支援の名を借りた「経済的収奪」に陥りつつあるのが現状ではないのか。グローバル化の名の下で、新たな飢餓貧困と格差が生み出されてはいないか。

 きのう安倍晋三首相は新目標に関する演説に臨み、「日本は貧困の撲滅に向け、質の高い成長を追求する」と述べた。アジア・アフリカなどで国づくりの基礎となるインフラへの投資を推進する姿勢を前面に出した。

 その投資は誰のためなのか、日本政府はしっかり考えてもらいたい。まず人々の生命や生活を確保するものであるべきだ。

 いま求められるのは先進国が政治的・経済的思惑を離れ、資金と人を出して行動することだろう。飢餓に苦しむ最貧国の立場から、食料供給や農業技術などの支援を急ぐ必要がある。

(2015年9月29日朝刊掲載)

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