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聞き取り残す被爆者の記憶 追悼祈念館代筆の体験記集発行 広島

 被爆70年に合わせ、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(広島市中区)は、県内の被爆者50人の証言を職員が代筆した被爆体験記集「しまってはいけない記憶」を発行した。市内の全中学、高校や、県内の主な図書館などに配り、平和学習に役立ててもらう。

 高齢や病気のため執筆が難しい被爆者の記憶を残そうと、同館は2006年度から希望者の聞き取りを開始。14年度までに103人分を館内で公開している。多くの人に読んでもらおうと、本年度から2カ年で書籍化する第1弾。

 進徳高等女学校(現進徳女子高)2年で被爆した松長静子さん(83)=中区=は級友の原爆死や39歳で乳がんを患った苦難を伝え、「平和のメッセージを受け継ぎ伝えていただきたい」と願う。原爆に娘2人を奪われた女性や、証言活動を続ける在日韓国人2世の男性の体験記も収める。

 A5判、557ページ。折り鶴再生紙で600部を作製した。叶真幹館長は「被爆体験はもちろん、焼け跡での助け合いや放射線被害への恐怖などさまざまな心情に触れてほしい」と話している。同館Tel082(543)6271。(水川恭輔)

(2015年10月1日朝刊掲載)

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