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社説・コラム

『書評』 郷土の本 ヒロシマ復興 努力と愛郷心

 「75年間は草木も生えない」とうわさされた焦土は、どのように輝きを取り戻したのか―。被爆70年の節目に刊行された「まんがで語りつぐ 広島の復興」=写真=は、人類最初の被爆地、広島の街を再生させた先人の営みにスポットを当てた。

 多くの同僚を失いながら焼け野原に電気、ガス、水を送り続けた事業所の従業員、街のにぎわいを生み出した小売業の創業者、「ものづくりの街」の柱でもある自動車産業の技術者…。中国放送(広島市中区)の戦後70年企画から生まれた本書は、幅広い世代に希望を現実にする努力の尊さと愛郷心を伝える。

 「セ・リーグのお荷物」と呼ばれた弱小市民球団・広島東洋カープの初優勝までの軌跡や、平和大通りを舞台にした「ひろしまフラワーフェスティバル(FF)」の誕生にまつわる逸話も盛り込んだ。広島の主要企業の社史や個人の回想録からシナリオを練り、手塚プロダクションが作画を手掛けた。255ページ、1944円。小学館クリエイティブ。(石川昌義)

(2015年10月4日朝刊掲載)

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