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原発防災域30キロに拡大

対象6市は評価 島根原発 早急な指針 要望

 国の原子力安全委員会が原発事故に備えて重点的に防災対策をとるべき地域(EPZ)を拡大し、半径30キロ圏内とする案を示したのを受け、中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)で対象となる島根、鳥取県の6市は20日、防災体制の強化につながる見直し案を一定に評価した。一方で、住民避難の範囲など具体的な指針を早期に示すよう注文した。(樋口浩二、川上裕)

 「福島第1原発事故をみれば、拡大は当然。一定の評価はできる」。新たに避難や屋内退避の準備が必要なエリアとなった雲南市の福間克巳総務部次長は強調する。

 一方で、島根県は、島根原発から20キロ圏内の住民約25万人の避難を前提に、地域防災計画を見直しており、大国羊一危機管理監は「何キロ圏の住民が避難すべきか、早急に具体案を示してほしい」と求めた。

 今回の見直し案では住民避難の範囲は示されておらず、30キロ圏までを対象とすれば、一気に約46万人に増えるからだ。

 市域全域が対象エリアになる松江市の松浦正敬市長は同心円状の線引きについて疑問を投げ掛ける。「30キロという数字が独り歩きしても中身が伴わない。事故の規模や気象条件など地域ごとの想定も必要だ」と訴えた。

 島根県の溝口善兵衛知事も具体的な防護対策の明確化を求め、「原発が立地する自治体の意見聴取が重要だ」と注文した。

 20~30キロ圏内にある安来市は、EPZの拡大を国に要請してきただけに、見直し案を前向きに受け止める。松本城太郎危機管理監は「住民避難など防災計画を見直すとともに、中電にも情報公開を求めていく根拠となる」と強調した。

 島根原発から約27キロにある雲南市内のスーパーを訪れていた団体職員永瀬敦子さん(45)=同市大東町=は「命に関わることだけに広範囲の対策は必要。ただ、原発事故は全ての備えを吹き飛ばしそうな不安は残る」と話した。


山口県「当面は情報収集」 

 山口県では、中国電力が上関町に計画する原発建設が実現した場合、岩国、周南市の一部を含めた9市町が30キロ圏内に入る。

 県防災危機管理課は範囲拡大の見直し案について「最終的な決定ではない。県として防災上の措置が必要かどうかは、国の責任で判断基準が示されるべきだ」とし、現時点で具体的な対応は予定していないという。

 県は、震災を教訓に県地域防災計画の見直し作業に着手しているが、上関原発は計画段階のため原子力災害は検討の対象外。計画見直しのために設置された大規模災害対策検討委員会(19人)のメンバーにも原発事故の専門家はいない。

 ただ、県内から最も近い原発の四国電力の伊方原発(愛媛県伊方町)の30キロ圏内に上関町の八島が入る。

 二井関成知事は5月の会見で伊方原発の事故発生時の対応について「愛媛県の考えや国の方向性をみて考える。当面は情報収集をしていく」としている。(金刺大五)


「適切に対応」 中電が見解

 原子力安全委員会の事務局が原発事故に備えて防災対策を重点的にとる地域の見直し案を示したことについて、中国電力は20日、「今後の議論を踏まえ適切に対応したい」との見解を示した。

 中電は現在、島根原発が立地する松江市、島根県と安全協定を締結。異常時の情報連絡などを定めている。一部が10キロ圏内にある出雲市とも情報連絡協定を結んでいる。周辺自治体からは協定締結を求める声も出ており、協定を結ぶ自治体が増える可能性がある。

(2011年10月21日朝刊掲載)

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