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社説・コラム

『潮流』 被爆者に誉れを

■報道部長・下山克彦

 ノーベル賞ラッシュだ。すでに医学生理学賞を大村智・北里大特別栄誉教授(80)が、物理学賞を梶田隆章・東京大宇宙線研究所長(56)が受けることとなった。私たちがさらなる朗報をと期待しているのが、日本被団協への平和賞授与である。

 15年近く前、東京支社にいたころ被団協受賞もありそうだ、との情報が入った。港区の事務所に急ぐよう同僚に指示し、こちらは各方面に電話をかけまくった記憶がある。ただ当時は半信半疑。いや正直、「まさか」との思いが先に立っていた。

 だが今は違う。被爆者たちはすでに平和賞のベテラン候補者なのだ。同賞の受賞歴がある反核平和団体の国際平和ビューロー(IPB、本部・ジュネーブ)は、ことしも含め過去5回、被団協を候補に推薦した。今思えば、当方が大騒ぎしたのは最初の推薦時の2001年だった。機は熟したと言っても言い過ぎとは思わない。

 あの日を伝え、ひたすら核兵器廃絶を訴え続けてきた被爆者たち。二度と被爆者を生んではいけないとの思いに支えられた愚直なまでの行動は、世界平和の一助になってきたはずだ。戦後70年の節目の年、中露の覇権的な動きも手伝って世界秩序のきしみが聞こえるこの時代、存在は重きを増していると信じたい。

 こじつけのようではあるがこんな見方もある。1985年に核戦争防止国際医師会議(IPPNW)、95年にパグウォッシュ会議、2005年には国際原子力機関(IAEA)と、10年ごとに核問題関連の平和賞受賞が実現しているのだ。そして10年たったことし、期待は増す。

 たとえ受賞を逃しても、その輝きが色あせることはない。ただ、年老いた被爆者を思えば、そこに誉れあることを願う。発表は9日午後6時である。さまざまに思いを巡らせながら、吉報を待ちたい。

(2015年10月8日朝刊掲載)

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