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中電、鳥取県に6億円 島根原発の防災費 立地自治体以外で初

 鳥取県は7日、中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の防災対策費として、中電が6億円を寄付する意向を伝えていたことを明らかにした。県西部の米子、境港両市は広域避難計画策定が必要な30キロ圏にあり、県が負担を求めていた。内閣府によると、原発の防災対策で電力会社が立地自治体以外に財政支援するのは初めてとみられる。(川崎崇史、川井直哉)

 県によると、中電鳥取支社が5日、「島根原発の防災対策に伴い、新たに生じた財政需要に6億円を拠出する」とする苅田知英社長名の文書を提出。県は中電の寄付を基に基金を創設し、専門職員の人件費や資材備蓄などに充てるほか、米子、境港市の防災対策にも交付金として拠出する方針。

 県は2013年度から、原子力安全対策課(11人)の新設や原子力安全対策監配置で防災対策を進める。人件費など年1億円余りの負担となるが、国の交付金や原発立地県への核燃料税などの財源はなく、県は一般会計で対応。平井伸治知事は昨年10月、中電本社で費用負担への協力を苅田社長に要請していた。

 平井知事はこの日、中電の財政支援について「本来は国がすべきこと」とし、国の財源措置が実現するまでは「中電に継続を求めたい」と述べた。一方で、島根原発2号機再稼働をめぐる判断には影響しないとの姿勢を強調した。

 中電の岩崎昭正常務は「防災に必要ということで基金への拠出に協力した。今後については別途検討したい」と説明。島根県の溝口善兵衛知事は「本来は国が財源を措置すべきだが、当面の対応として決まったと受け止めている」とコメントした。

【解説】再稼働対応へ影響も

 中国電力島根原子力発電所の30キロ圏にある鳥取県が、国ではなく、中電から原発の防災対策費の支援を受けることは、2号機再稼働の是非について、判断を少なからず縛る恐れもある。

 平井伸治知事は「再稼働の議論はまだニュートラル」と影響を否定する。その上で「再稼働を議論する前提問題として、周辺地域でも安全対策は必要だ」とした。

 中電が鳥取県への寄付を決めたのは、「原子力防災対策の財政需要は、立地県だけでなく、鳥取県も同様」との立場をとる島根県の溝口善兵衛知事の「後押し」も大きい。事実上、立地自治体が判断してきた再稼働の是非について、溝口知事は30キロ圏の鳥取県と両県6市の「総意」により、判断するとした。中電にとり、鳥取県の了解は必須条件となっている。

 島根県は本年度、中電から徴収する核燃料税率を上げ、松江市も中電からの寄付金を毎年受ける。

 島根、鳥取両県の知事とも、国の財政措置があるべきだとして「当面の対応」と強調する。国は原発を監視、規制する立場にある。自治体が住民の安全第一の判断をするためには、事業者よりも国の負担で進めるほうが、住民の理解は得られるのではないか。(川井直哉、川崎崇史)

(2015年10月8日朝刊掲載)

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