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岩国基地 うるささ指数再上昇 自治体独自の測定急げ

 昨年5月の米海兵隊岩国基地(岩国市)の新滑走路運用後、いったん下がっていた騒音のうるささ指数(W値)が上昇に転じている。今年6~8月の測定データの6割以上が前年同月よりアップ。さらに2割以上が運用前を上回り、騒音回数が減ったのに上がったケースもある。新たな飛行ルートや編隊離陸が原因とみられ、2014年の空母艦載機移転を控えて新たな課題が浮上した。(編集委員・山本浩司)

 中四国防衛局(広島市中区)が、基地周辺や大竹、廿日市市など18カ所に設置した騒音測定器のデータから明らかになった。70デシベル、5秒以上(滑走路周辺は3秒以上)の値を公表している。

 データによると、新滑走路運用前(09年)と運用開始後(10年)の各6~8月の平均W値を比較すると、9割でW値が下がったが、今年の同時期では64%で前年より上昇。低下は32%だった。

 岩国市由宇町千鳥ケ丘では昨年6~8月は前年を下回ったが、今年の同時期のW値は61.9~62.9で前年より0.1~3.5上昇。同市門前町、同市青木町でも3カ月すべてで前年を上回った。

周辺地域に拡大も

 さらに、運用前と運用後が比較できるデータでは22%が運用前を超えた。うち阿多田島(大竹市)と山口県周防大島町の2カ所、同県和木町の計4カ所では2カ月で運用前を上回り、基地周辺への騒音拡大が見て取れる。

 また、1日平均の騒音回数からみると、回数が減ったのにW値が上がったのが15%、変わらないのにアップしたのが24%あった。

 この状況について、岩国基地の拡張・強化に反対する広島県西部住民の会の坂本千尋事務局長は「運用開始翌月から始まった編隊離陸の影響としか考えられない。複数機が同時に離陸し、連なって飛行するため、回数が減ってもW値が上がっている」と分析する。

 日本騒音制御工学会(東京)の堀江侑史事務局長も「W値は具体的な増加量を示さないが、迷惑度が増えたのは確実」という。

 一方、同防衛局は「騒音変化は飛行経路の変化に伴うもの」と認めるものの、「データでは編隊離陸を区別できず影響は分からない」とみる。  岩国基地報道部は取材に対し「新滑走路の運用開始前後で航空機運用の目立った変化はない」と回答。編隊離陸については「滑走路の沖合移設で、2機またはそれ以上による編隊離陸などの運用が可能になった。より効率的な運用ができ、最終的には今後始まる民間機のスムーズな運航を助ける」としている。

 14年までに計画されている厚木基地(神奈川県)からの空母艦載機の移転で、ジェット機は約90機と現行の2倍以上になる。編隊離陸が増えるのは確実なうえ、移転するFA18型機全44機が岩国基地の機種より騒音が高いとされる新型であり、騒音が広島市など広範囲に及ぶ恐れがある。

移設前設置が大半

 国の騒音測定器の大半は滑走路移設前に設置されている。基地周辺自治体は、住民の聞き取り調査などで飛行ルートや騒音の変化の確認を急ぐべきだ。変化に応じて独自の測定器も設置するなど、艦載機移転に備えた取り組みが求められる。

うるささ指数(W値)
 航空機騒音が生活に与える影響を評価する国際基準。飛行回数や時間帯を加味して平均値を求める。国は環境基準を住宅専用地域は70以下と定めている。W値70は地下鉄の車内の音(80デシベル)が昼間で1日50回あったときのうるささに相当する。

(2011年10月23日朝刊掲載)

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