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後援 市の拒否事例27件 憲法や原発テーマ 中国地方54市調査 「中立性」理由に

 市民団体が企画した行事のうち、憲法・平和や原子力発電、安全保障をテーマにした催しの後援申請について、中国地方の市が断った事例が2011年度以降、少なくとも27件に上ることが中国新聞の調べで分かった。「政治的中立性」を理由に拒否したケースが目立つ。(石川昌義、馬場洋太)

 中国地方の54市を対象に調査した。津山市を除く53市から回答を得て、行事の内容や主催団体の活動趣旨を理由に後援を拒否した事例から集計した。行事名や主催団体を明らかにしない回答もあり、実態はさらに多い可能性がある。県別では山口13件、鳥取7件、広島4件、岡山2件、島根1件だった。

 テーマ別では、憲法・平和問題が15件に上った。宇部市での被爆ピアノ平和コンサート(12年度)や、ハト形の風船を飛ばす鳥取市での平和の鳥フェスティバル(14年度)など、護憲派の市民団体が主催した平和関連行事が目立つ。倉敷市は市内の戦争遺跡の保存策を話し合う行事の後援を「目指す保存方針が異なる」として見送った。

 原発問題は10件が不許可だった。中国電力が山口県上関町で建設を計画する上関原発の予定地に近い柳井市は、原発をテーマにした映画上映会(12年度)と講演会(15年度)の後援について「推進、反対いずれの趣旨でも中立性が保てない」として拒否している。

 広島市は、脱原発を主要テーマに同市であった日本母親大会(11年度)の後援を「市の施策と相いれない」として認めなかった。尾道市は11年度に内部被曝(ひばく)に関する講演会を後援しなかった。

 安全保障問題は2件。米海兵隊岩国基地がある岩国市は、12年度にあった沖縄の米軍基地をテーマにした演劇の後援を「市の基地政策方針にそぐわない」として認めなかった。

 後援を条件に公共施設の会場使用料の減免や図書館、公民館などでのチラシ配布を認める市もあり、催しのPRを目的にした後援申請も多い。後援を拒否された団体からは「言論や表現の多様性を認めない事なかれ主義の表れだ」と批判も出ている。

(2015年10月11日朝刊掲載)

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