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ヒロシマ賞 ハトゥムさん パレスチナ人女性芸術家

 広島市は15日、美術を通じて平和に貢献した作家に贈る「ヒロシマ賞」の第10回受賞者にパレスチナ人の女性芸術家モナ・ハトゥムさん(63)を選んだと発表した。インスタレーション(空間構成)や映像作品を通じて、政治的な抑圧や疎外されてきた人間の苦しみを表す独自の創作活動を評価した。

 ハトゥムさんはレバノン・ベイルート生まれ。旅行で英国滞在中にレバノンの内戦で帰国できなくなり、そのままとどまった。異境に暮らしてきた境遇を反映した感情やジェンダー問題、世界の政治課題を表現。ロンドンとドイツ・ベルリンを拠点に活動し、世界各地の美術館に出展している。

 ハトゥムさんは市を通じ「『ヒロシマの心』に象徴される世界平和という理念に関われ、光栄であるとともに身のすくむ思い」とコメントを寄せた。2017年に広島市南区の市現代美術館で記念展を開き、ヒロシマをテーマにした新作も発表する。

 市は1989年に同賞を創設。美術関係者らによる選考を経て3年に1度授与しており、2013年の前回までに米国在住の芸術家オノ・ヨーコさんたち10人(第3回は2人)に贈った。決定翌年に記念展を開いてきたが、新作の制作時間を十分に確保するため、今回は決定を1年ほど早めた。(田中美千子)

(2015年10月16日朝刊掲載)

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