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静かな空 遠く 「悲願かなわず残念」 岩国爆音訴訟 原告団の桑野さん

 「悲願だった米軍機の飛行差し止めが認められず残念だ」。15日、岩国爆音訴訟の判決を山口地裁岩国支部の法廷で聞いた桑野友博さん(70)=岩国市由宇町=は、原告団結成の世話役の一人として、原告集めや騒音被害の聞き取りなどに奔走してきた。2009年の提訴から6年。米海兵隊と自衛隊が共同使用する岩国基地の騒音の違法性が初めて司法の場で認められたものの、夜間・早朝の飛行や米空母艦載機移転の差し止めはかなわず、無念さをにじませた。(増田咲子)

 桑野さんが由宇町の自宅で暮らし始めたのは定年退職を数年後に控えた1999年から。基地から10キロ以上離れているが、航空機騒音の指標「うるささ指数(W値)」は75の区域だ。福岡市出身で、九州大経済学部に在学中の68年、米軍戦闘機の大学構内への墜落事故を経験。事故は岩国基地の滑走路沖合移設の契機にもなった。

 大学卒業後、山陽パルプ(現日本製紙)に入社し、岩国市で勤務。東京や大阪などへの転勤を経て、「ついのすみかに」と自然豊かな由宇町に自宅を構えた。

 だが、米軍機の騒音は想像をはるかに超えていた。引っ越した夜、就寝中にごう音で跳び起きた。会話を中断させ、睡眠を妨げる。「静かな暮らしを手に入れたい」と、原告集めに加わった。

 滑走路移設工事の着手後、住民の願いをよそに在日米軍再編に伴う米海軍厚木基地(神奈川県)から岩国基地への空母艦載機移転計画が浮上。騒音の「たらい回し」に、「国にだまされた」と地元感情を代弁する。2010年の新滑走路運用開始後も「飛行経路が変わったのか、余計にうるさくなった」と感じる。

 艦載機受け入れ工事が着々と進み、極東最大級の基地に変貌を遂げようとしている岩国基地。安全保障関連法の成立で、米軍と自衛隊の一体化も進む。「四六時中ごう音にさらされ、敵から真っ先に狙われるのが岩国になるだろう。住民が求めているのは、静かで安全な日常だ。これからも声を上げ、闘いを続ける」と力を込めた。

(2015年10月16日朝刊掲載)

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