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社説・コラム

デビュー40年 極めた女歌 広島出身の角川博 記念曲 切ない心しっとり

 広島市出身の演歌歌手、角川博(61)がデビュー40年目を迎えた。「女歌なら誰にも負けない」と自負するベテランは、節目の記念シングル「蒼(あお)い糸」でも切ない女心をしっとりと表現。存在感を見せる。(余村泰樹)

 広陵高(広島市安佐南区)で野球に打ち込んだ後、いとこの影響でクラブ歌手になり、博多でスカウトされた。1976年に「涙ぐらし」でデビューし、日本レコード大賞や日本有線大賞の新人賞に輝いた。紅白歌合戦にも3度出場。「その時々で手助けがあり、1人では歩んでくることはできなかった。瞬間、瞬間を大切に積み重ねてきた」と振り返る。

 「女歌は任せた」。尊敬する五木ひろしからそう託された。記念シングル「蒼い糸」は、カップリング曲の「あなたへ」とともに五木がプロデュースと作曲を手掛けた。「悲しさや切なさが交差した曲」と角川。特別な思いを込めて歌い上げる。

 3年前に自らの事務所を設立し、独立した。所属事務所に任せきりだったこれまでと一変、責任も業務も増えた。「張り合いを感じる。歌っていいなと、前より生き生き活動している」と笑顔を見せる。

 かつてと比べ、厳しさが増す演歌の世界。聴き手の高齢化は進み、若い歌い手もなかなか育たない。「若者から見ると、暗く重い音楽と感じるのかもしれない。けれども、それが人間の糧になる。日本の文化を守りたい」と力を込める。「余裕が出れば、これからの歌謡界を背負う若者を育てていきたい」と後進の育成にも思いをはせる。

 母親が被爆し、2世の角川。「歌えるのは平和だからこそ。平和の気持ちを届けていきたい」。古里への強い思いを胸に、歌声を響かせ続けるつもりだ。

(2015年10月17日朝刊掲載)

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