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社説・コラム

天風録 「真円の旗70年」

 虫の夜の星空に浮く地球かな(大峯あきら)。真宗僧侶で哲学者でもある作者が一番「はからいなく」できた句。たくまずして口からすっと出てきたという。虫の音に耳を澄ましているうちに宙へ投げ出されたよう、との評がある▲こちらも、宙から見下ろしたような地球だ。正距方位図法で描かれ、北極を中心に世界を真円で表現した。それを平和の象徴のオリーブの葉で囲む。地の色はブルーの国連旗である。きょう国連誕生から70年を迎える▲「先輩格」の国際連盟が第2次大戦を防げなかったのに対し、大国が拒否権で応酬しながら、持ちこたえてきた。冷戦が終わるや、中東のカオスに直面する。だが今、平和を脅かすのは戦争だけではない▲ゼロ・ハンガー(飢餓ゼロ)に国連は挑む。世界では8億人が慢性的な飢えに苦しむのに、21億人が肥え太っている。食べ残しも見過ごせない。TPPで輸入品が安くなると喜ぶ前に、日本人も考えることがあるはず▲国連訓練調査研究所(ユニタール)の事務所が広島にはある。親善大使としてカープの黒田博樹投手もブルーの帽子をかぶった。国連の武器なき闘いはこれから。本物の地球を投げ出すわけにはいかない。

(2015年10月24日朝刊掲載)

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