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原発事故想定で訓練開始 島根・鳥取県と6市

 島根県は23日、中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の事故を想定した原子力防災訓練を原発30キロ圏の鳥取県、両県内の6市と合同で始めた。25日と合わせて2日間あり、初日は原発5キロ圏の住民避難と情報伝達・収集などの初動対応を中心に訓練した。25日は住民を30キロ圏外へ避難させる訓練が重点となる。

 送電線トラブルで同原発2号機の全電源を喪失し、原子炉格納容器から放射性物質が外部に放出されたとの想定。この日は、両県で国や中電、自衛隊を含め計約90機関、約2400人が参加した。

 島根原発の西1・5キロの同町片句地区では、陸上自衛隊による在宅要支援者の搬送訓練を初めて実施。要支援者役の市職員を自衛隊員が担架で救急車まで運んだ。同地区では、住民約40人が一時集結所の集会所に集まり、避難先に指定されている大田市行きのバスに乗り込むまでを訓練した。

 両県は事故の際、30キロ圏内の約47万人を広島、岡山を含む中国地方4県69市町村へ避難させる広域避難計画を立てている。両県のシミュレーションでは、全員が30キロ圏外へ避難する標準的な時間を27時間50分としている。(川井直哉、松島岳人、秋吉正哉)

災害弱者の避難難しく 島根県など原子力防災訓練 迅速なデータ収集も課題

 県が23日、中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の事故に備え、原発30キロ圏の鳥取県、両県6市などと実施した原子力防災訓練は、原発5キロ圏内の避難訓練と情報収集に重点を置いた。訓練を通じ、災害弱者の避難の難しさや、迅速なデータ収集の課題などがあらためて浮き彫りになった。(川井直哉、松島岳人、秋吉正哉)

■要支援者避難

 原発から西1・5キロの同町片句地区では、陸上自衛隊出雲駐屯地の隊員による要支援者の搬送訓練を初めて実施した。隊員3人が車の入れない路地で待つ要支援者役の市職員を担架に乗せ、救急車まで約40メートルを運んだ。

 同地区自主防災対策協議会の山本建夫会長(69)は「自衛隊は手際が良かった」と感心する一方、「自衛隊が来ない時、路地が狭く坂が急なこの地区で、高齢者が助け合って、素早く避難できるのか」と不安をのぞかせた。

■屋内退避

 原発の南5・5キロの松江市古志町の障害者支援施設「四ツ葉園」では、職員10人が外部からの放射性物質の侵入を防ぐ放射線防護装置を稼働させ、移動が困難な入所者約20人と屋内退避訓練をした。

 県からの連絡を受けた職員は、入所者を館内の食堂に誘導。シャッターを下ろして目張り作業をし、3月に設置された防護装置の稼働を確かめた。訓練は問題なく終了したが、同園を運営する四ツ葉福祉会の青戸俊道総務課長は「入所者だけでなく近所の方が施設へ避難する可能性もある。交代要員も含めて職員をどう確保するかが課題だ」と話した。

■情報収集

 大気中の放射線量を測定する緊急時の放射線監視訓練では、原発の南5・5キロにある松江市東長江町の公園近くにある空き地で、防護服に身を包んだ中電と協力会社の社員計3人が、放射線を測定するための土壌と草を採取した。

 現地作業は順調だったが、車による移動時間が想定よりもかかったため、作業全体では当初の予定より約40分間遅れ、約3時間10分かかった。県原子力環境センターの西浩幸センター長は「車が渋滞した時の対応を考えていきたい」と話した。

(2015年10月24日朝刊掲載)

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