×

ニュース

愛宕山跡地 売却の意向 「艦載機」どう整合性 先行移駐反対と矛盾

 岩国市の福田良彦市長が愛宕山地域開発事業跡地を国に売却する意向を示したことで、次の焦点は山口県との協議になる。二井関成知事は市の意向を尊重する方針で、8日も「追認」を示唆した。ただ、二井知事は米軍普天間飛行場(沖縄県)移設の見通しが立たない間は、米海兵隊岩国基地への艦載機移転を認めない方針も崩していない。跡地売却との「整合性」をどう取るか、見えにくい。

 跡地には艦載機移転に伴い、米軍の軍人や家族の住宅約270戸が建設される計画で、跡地売却は事実上、艦載機移転の容認を意味する。二井知事は在日米軍再編を一体的に捉える国の「パッケージ論」に基づき、岩国への先行移駐には異を唱えてきた。

 跡地事業の赤字解消と、艦載機移転の基本方針を同時に掲げてきた二井知事。8日、市長の意向表明を受け、急きょ県庁で取材に応じ、「住民の理解を得る努力を重ねられると思う」と売却への同調をにじませた。

 事業の収支不足額は昨年度末で241億円。県は跡地を所有する県住宅供給公社を来春に解散させる方針で、国に売却できない場合、多額の借金を県と市で肩代わりしないといけない待ったなしの財政事情もある。

 一方、普天間をめぐる情勢は混迷。民主党政権が目指す県内移設に対し、沖縄県知事や名護市長の反発は依然として強い。二井知事も移設の見通しは立っていないと認める。

 艦載機の基本方針について二井知事は「市長も同じスタンス。よく協議をして整合性を取れるようにしないといけない。12月の議会で県の考えを示す」と強調。ただ、年内に普天間問題が進展をみせるか不透明な状況下で売却に踏み切った場合、基本方針は根底から崩れるといえる。

 二井知事は「両方解決できるよう最大限の努力をしていく」というが、基本方針を十分な説明なしに撤回、修正した場合、赤字解消のために県政の基本理念をかなぐり捨てたとの批判も出てこよう。両立は困難との見方が広がる中で、この問題にどう対処するか、知事、市長には丁寧で分かりやすい説明が求められる。(金刺大五)

(2011年11月9日朝刊掲載)

年別アーカイブ