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社説・コラム

天風録 「トランプとクリントン」

 「君はクビだ!」。米不動産王ドナルド・トランプ氏がかつて司会をした人気テレビ番組での定番せりふだ。ケーキを作って売れ。例えばそんな宿題を若者たちが競い、脱落者に冷たく通告する▲番組を降板して大統領選に挑む今なお、お茶の間注目の的だろう。「余興候補」のはずが予想外の展開。肝心の政策はそっちのけで移民や女性への暴言を吐いて人気が急伸、世論調査で共和党候補のトップをひた走る▲良識派が眉をひそめながらも支持率が右肩上がりなのは「政治家らしくない」からか。有権者にこびず、毒舌でライバルをののしる様子が痛快さを呼ぶらしい。きれいごとばかりの政治への不満が底流にあるとの見方も▲民主党の対立候補はやはりあの人か。ヒラリー・クリントン氏の復活で米メディアは両者の一騎打ちを予想し始めた。ほかの人物が割って入るかもしれないが、選挙の動向は日本にも影響する。無関心ではいられない▲誰であっても、オバマ政権がやり残した「宿題」をお忘れなく。中東の平和をどう築いていくか。核なき世界の道筋は―。向こう1年かけて、しっかり論じ合ってもらいたい。被爆地から「クビ」と言いたくならぬように。

(2015年10月25日朝刊掲載)

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