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広域退避に不安の声 原発30キロ圏防災訓練 放射線測定手間取る 島根県など

 島根県と鳥取県、原発30キロ圏の両県6市が25日、中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の事故に備え実施した原子力防災訓練は、住民避難をメーンに行われた。放射性物質の付着を調べるスクリーニングを、国が示した簡略化した手順に変更したが、予定時間を超過した会場も。長距離移動に対する不安の声も上がった。

スクリーニング

 スクリーニングの会場の一つとなった出雲市の県立東部高等技術校には、松江、出雲、雲南の3市から住民約150人が、バス計9台で集まった。国がことし3月に示したマニュアルに従い、これまで全身だった放射線量の測定を、頭部など3カ所のみとした。車もワイパーとタイヤの2カ所に簡略化した。

 だが、約40分間で70人を測定する予定だったが、車の順番待ちなどで、15分オーバーとなった。県防災部の岸川慎一部長は「人数と時間を計測しているので、検証して今後に生かしたい」と話す。

長距離移動

 原発から約8キロ南西の松江市岡本町の秋鹿小には、美郷町と川本町に避難する住民計49人が集まった。マスクを着けた訓練参加者は名前と住所を口頭で伝え本人確認した後、午前9時にバス2台に分かれ出発。県立東部高等技術校を経由し、美郷町へは15分遅れの午後0時半に到着した。

 バスから降りた建築業、松崎広実さん(55)は「遠くて大変だと感じた。事故では渋滞が心配」と話す。別の住民は5キロ圏内から優先して避難する県の広域避難計画に「5キロ圏の人が逃げるのを、圏外の人が待っていられるだろうか」と心配していた。

避難先

 美郷町には、秋鹿地区の住民45人がバスで避難。樋ケ司副町長ら町職員14人が出迎えた。現地では、同地区の代表者と町職員が、避難生活のルールを協議し、避難者全員に伝達。プライバシー確保のために用意した小部屋などを全員で見学した。

 秋鹿公民館の小山博和館長(63)は「秋鹿地区の避難先が川本と美郷の両町に分かれている。できれば地区で1カ所に避難するのがいい」と訴えていた。

延べ3700人まさかに備え 原子力防災訓練 島根県など

 中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の事故に備え、島根、鳥取県と原発30キロ圏の両県6市が23、25日に実施した原子力防災訓練。2日間で延べ約150機関、約3700人が、事故の進展に合わせたさまざまな訓練に参加した。

 事故の初期段階とした23日には、災害対策本部と各自治体が通信訓練で手順を確認。原発2キロ圏の松江市鹿島町の片句地区では、住民約40人が一時集結所の集会所に集まった。

 事故が深刻化し、放射性物質が大気中に放出されたとした25日には、住民約500人が30キロ圏外へ。車に付着した放射性物質を取り除く除染作業の訓練などがあった。(秋吉正哉)

(2015年10月26日朝刊掲載)

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