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黒い雨 1万3000人分データ 放影研保管 被曝解明へ期待

 広島、長崎の原爆で約1万3千人が放射性降下物を含む「黒い雨」を浴びたとするデータを、放射線影響研究所(放影研、広島市南区・長崎市)が保管していることが9日、分かった。黒い雨に関する大量の面接調査データの存在が明らかになるのは初めて。(金崎由美)

 データの基になる面接調査は1950年ごろ、放影研の前身の原爆傷害調査委員会(ABCC)が実施した健康追跡調査の一部。対象は広島、長崎の両市で12万人に上った。

 「原爆直後雨に遭ったか」との質問に、約1万3千人が「はい」と回答。うち大半の約1万2千人は広島で被爆した人だという。

 データの存在が明らかになった発端は、長崎県保険医協会(長崎市)の本田孝也副会長が米国のインターネットサイトで、データの一部を用いた放影研の元調査員による72年の報告書を発見したこと。黒い雨を浴びた人に高い確率で急性症状が認められるとしている。

 本田副会長が放影研に問い合わせたところ、約1万3千人分の面接調査データがあることが分かった。

 放影研は、被爆間もない時期に黒い雨の大規模調査を行ったことを広く知らせてこなかった。本田副会長は「データを解析すれば内部被曝(ひばく)の健康影響に一定の傾向が見えるのではないか」と指摘。放影研は「指摘を真摯(しんし)に受け止めたい」としている。

 厚生労働省は現在、被爆者援護法の対象となる「黒い雨」指定地域の範囲を議論する検討会を定期的に開催している。同協会は、放影研にデータを解析するよう求める要望書を小宮山洋子厚労相宛てに送った。

(2011年11月10日朝刊掲載)

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