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瀬戸内海汚染に懸念の声 伊方再稼働同意受け中国地方 自治体トップは理解

 愛媛県の中村時広知事が四国電力伊方原発3号機の再稼働に同意した26日、中国地方の市民団体からは原発事故による瀬戸内海の汚染や、住民の避難態勢の不備などについて懸念する声が相次いだ。自治体トップの多くは中村知事の判断に理解を示し、伊方原発の再稼働をめぐる動きを注視するとした。

 瀬戸内海の環境保護に取り組む市民団体「環瀬戸内海会議」(岡山市北区)の幹事で、島根県立大名誉教授の田嶋義介さん(72)は「過酷な事故が起きれば、放射性物質を含む汚染水が海にあふれる。閉鎖性海域の瀬戸内海では、放射性物質が滞留し、死の海になる恐れがある。電力は十分なのに巨大リスクを冒す責任を誰が負えるのか」と疑問を呈した。

反対の請願 不採択

 原発に反対する広島市佐伯区の市民団体「原発はごめんだヒロシマ市民の会」の木原省治代表(66)も「瀬戸内海の放射能汚染が心配だ」と訴えた。再稼働に反対する請願を愛媛県議会に提出していたが、不採択となった。

 中国電力島根原発(松江市)の地元でも、心配する意見が聞かれた。反原発の市民団体「さよなら島根原発ネットワーク」の杉谷肇共同代表は「本質的に危険な原発を稼働させてはならない」と強調。松江市の高校教諭植田祐行さん(52)は「伊方では避難計画の実効性が問題となっているが、島根も同じ」と懸念した。

受け入れ施設未定

 一方、愛媛県は6月、伊方原発で重大事故が起きた際の広域避難計画で、避難者の受け入れ先候補の一つに広島県を加えた。ただ、事故の想定や避難ルート、受け入れ施設は未定。県危機管理課は「事故発生時の連絡通報体制なども含め愛媛県と協議する」という。

 伊方原発から半径30キロ圏に一部が入る山口県。村岡嗣政知事は「愛媛県は国や四国電力に必要な対応を求め、それらの条件が満たされたと判断した。その判断を尊重したい」と述べた。

 島根原発を抱える島根県と松江市とも、中村知事の判断に理解を示した。その上で溝口善兵衛知事は「伊方原発3号機の再稼働については、原子力規制委員会による工事計画の認可などの手続きの動向をよく注視していく」とコメント。松浦正敬市長も「原子力規制委員会による保安規定の認可など、動向を注視したい」とした。隣接する鳥取県の平井伸治知事も「愛媛県独自の安全対策も進めてきた」と一定に評価した。

 伊方原発をめぐる動きについて、広島県漁業協同組合連合会(広島市西区)は「組合員から議題にするよう求める声はなく、組織として意見集約をする予定も現段階ではない」とした上で「安全対策は国の責任できっちりやってほしい」と望む。中国電力は「他社の発電所についてコメントする立場にない」。再稼働審査中の島根原発2号機については「審査に適切に対応するとともに、より一層の安全性確保に向けた取り組みを続ける」とした。

(2015年10月27日朝刊掲載)

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