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連載・特集

2001被爆者の伝言 瀬戸高行さん (上) 被爆二世の健康問題、早く結論を

瀬戸高行さん(75) 広島市安佐南区相田

 一九六八年、組合(国鉄労働組合)の書記の子供が白血病で亡くなっちゃった。被爆二世で七歳だった。その後も広島で被爆者の子供が相次いで白血病で死に、二世の健康が不安視され始めた。

 ▽17%が「病弱」と訴え

 国労で実態を調べようとしたが、反対意見が随分出た。「結婚や就職差別を呼び起こすかもしれん」。でも立ち止まっていたんじゃ、現に白血病などで苦しんどる二世の救済もできん。

 自分にも二人の娘がいて、中学生と高校生だった。もし影響があったら…。そんな葛藤(かっとう)もあったが、目を背けずに真正面から取り組んでいこうと考えた。実態をきっちり調べんといけん。

 国労が六六年、労働組合では全国で初めて結成した被爆者組織「原爆被爆者対策協議会(被対協)」の幹事を発足から十年余り務めた
 調査は、七二年の二、三月にやった。広島県や市の調査より早く、画期的だった。五百十七人の被爆者が協力してくれ、被爆二世千三十九人の実態がまとまった。「病弱」と訴えたのは、17・7%だった。正直、多いなあと思った。出産の異常、これも多かった。

 二世救援のカンパを全国で展開した。募金は三百万円を超えた。予想以上に多くて、うれしかった。二世調査の意味や、必要性が理解され、関心を呼んだんだと思う。

 放射線影響研究所は今年、被爆二世の健康影響調査に着手した。被爆の遺伝的影響解明が目的で、二世の健康問題が再び注目されている

 ▽手厚い対応を前提に

 放影研はずっと「調査はしたが、影響はない」と発表してきた。でも信用ならん。国労の調査をみると、何らかの影響があると私は思うとる。今度、ようやく本気で調べる気になった。動揺が起きることになっても、早く正確に結論を出さにゃーいけんと思う。

 もし、影響があると分かったら、被爆者と同じように手厚い扱いにすべきだ。不安だけを増大させるんじゃなく、きちんと対応することを大前提にせんと、調査のための調査になってしまう。

 国労や被対協の役員を経て広島県被団協や原水禁などの要職を歴任。今は一線から身を引き、ひ孫らと六人で暮らす
 被対協幹事のころは、東京に毎月行って国鉄当局と交渉した。いつも被爆者の問題を持ち出すので当局から「広島の原爆男」と呼ばれとった。それほどしつこく訴えた。

 原爆投下の日は、広島駅で働いとった。機関車の入れ替え作業中、光ったと思って、気が付いたら、三十メートルほど飛ばされとった。顔や手をやけどした。被爆を体験していたから、あれだけ熱心になれたんだろう。

 広島や長崎で、多くの二世が病床で苦しんどった時期でもあった。こんなことを他の人に体験させちゃいけん。そう思っとった。今考えると満足感がある。

(2001年7月24日朝刊掲載)

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