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防護服姿 行き交う拠点 福島原発対応「Jヴィレッジ」

 天然芝を覆い隠して建物が並び、防護服姿の作業員が行き交う。福島第1原発事故から8カ月となる11日、初公開された東京電力の対応拠点「Jヴィレッジ」(福島県楢葉町、広野町)。かつてのサッカー専用施設は、放射線の恐怖の中で収束作業を続ける「非日常」と「日常」を隔てる異質な空間と化していた。(岡田浩平)

 更衣室の近くに大量の白い防護服や手袋、帽子が並ぶ。手に取った男性3人が作業服の上から着込んでいく。顔全体を覆うマスク、線量計を受け取り、20キロ離れた原発へ向かうバスに乗り込む。

 出入りする作業員は1日約3千人。帰ってきた作業員は放射能汚染を調べる「ゲートモニター」を通って、20キロ圏外にある「クリーンエリア」に戻る。

 食堂もあるセンターハウスで作業員が配給のすいとんをすすっていた。建設工事に携わる会社員男性(59)は「むやみに汚染地域に入らないよう気をつけている」。個別の被曝(ひばく)線量は作業者証のバーコードで管理。内部被曝を調べるホールボディーカウンターは計12台がそろい先月から円滑に運用し、作業員は月1度受検しているという。

 原発で作業する度、放射性廃棄物となる装備品。屋根付き練習場に鉄製コンテナ(1立方メートル)に詰めて積まれるが、処理方法は決まっていない。既に4千個に達し、収容できる余力は2千個という。

 サッカー場のピッチには9月、東電社員用の千室分の単身寮が完成した。かろうじて、電光掲示板がサッカー場の面影を伝えていた。ここに選手とファンの熱気が戻る日はいつ来るのだろうか。

(2011年11月12日朝刊掲載)

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