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フクシマ後も揺るがず 原発依存高めるインド 停電解消に「不可欠」

 世界中に衝撃を広げた福島第1原発の事故から8カ月。成長著しいインドは、原発推進の旗を掲げ続ける。日本からの技術供与を可能にする原子力協定の交渉も近く再開される。「フクシマ」をどう受け止めているのか、現地で探った。(論説委員・岩崎誠)

 第2の都市ムンバイにあるインド原子力公社。技術部門を統括するバルドワジ副総裁は開口一番、「日本が立派にフクシマを乗り越えていることに感激した」と切り出した。

 公社は20基ある原発の稼働と増設計画を担う政府機関だ。3・11を機に、津波や地震の対策を詳細に点検しているという。

 副総裁は「あくまで自然災害であり、技術は揺らいでいない。女川などダメージを受けなかった原発に学ぶのも大切だ」と続けた。フクシマを都合よく解釈しているようにも聞こえてくる。

10年で25基増設

 強弁の裏には深刻な電力不足がある。年8%前後の経済成長を続ける一方、停電は日常茶飯事。進出した日系企業も「何とかならないか」と嘆く。しかも4割の世帯には電気が通っていない。「原発なしでは需要を賄えない」というのが政府の主張だ。

 現在の原発のシェアは2%。向こう10年で25基を新設し、2030年までに原子力による発電総量を13倍に増やすのが目標だ。日本の「もんじゅ」に似た高速増殖炉も来春には建設が終わるという。一方で日本と同様に、高レベル放射性廃棄物の最終処分場は決まっていない。

 原発建設地の住民には動揺が広がる。6基が計画される西部のジャイタプールでは4月に抗議活動が暴徒化。南部のクダンクラムでは9月、稼働が近い原発に反対する大規模なハンストが起きた。

 反対住民を支援する映画監督サシさん(52)は「インドの反原発運動はフクシマによって促された。日本と連携して輪を広げたい」。ただ国策を変えさせるほどの世論の高まりには結びついていない。

 既にインドは米国、ロシア、フランス、韓国から技術協力を受けている。「ビジネスチャンスは大きい。できるだけ早く日本も協定締結を」。外務省のバンバワリ東アジア局長は誘い水を向ける。

軍事転用の懸念

 だがインドは核拡散防止条約(NPT)に未加盟で、国際社会の監視は届きにくい。政府は「核兵器廃絶を訴えている」と強調するが、現に核兵器を保有し、今後も原発技術を軍事転用する懸念は消えない。

 これに対し日本政府は原子力協定について「核実験すれば協力停止」などの条件を突きつけ、インド側が難色を示してきた。斎木昭隆駐インド大使は「(軍事転用の歯止めは)今後も詰めなければならない論点」と話す。

 しかしNPTの加盟までは前提条件としない、というのが日本政府の方針でもある。

 被爆国は脱原発依存と原発輸出とをどう両立させるのか。新興国の旺盛な電力需要に向き合うスタンスが、あらためて問われている。

(2011年11月13日朝刊掲載)

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