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原爆体験「人生観に変化」 ノーベル賞 下村氏ら講演 パグウォッシュ会議3日目

 長崎市で1日から開かれている科学者の国際組織「パグウォッシュ会議」世界大会で3日、ノーベル化学賞受賞者の下村脩(おさむ)・米ボストン大名誉教授(87)が講演した。長崎で原爆を体験し、「ショックで人生観が変わった」と回顧。参加者や傍聴した市民に、戦争と核兵器のない世界の実現を訴えた。

 当時16歳で長崎県諫早市の軍需工場に動員されていた下村さんは、帰宅途中に浴びたという「黒い雨」や、遺体、負傷者が収容された中学校の様子を証言。「被爆した友達は誰だか分からないほどひどいケロイドで覆われていた」と語った。

 2008年にノーベル賞を受け、米国の原爆開発施設だったロスアラモス国立研究所に招かれて講演した際に原爆をめぐる質問が出なかったといい、「若者には歴史のひとかけらにすぎないのか」と、記憶の継承に危機感も漏らした。同じ年にノーベル物理学賞を受けた益川敏英・名古屋大特別教授も登壇した。

 一方、全体討議では、11年3月の福島第1原発事故を踏まえて「原子力の平和利用のリスク」を議論。国会の事故調査委員長を務めた黒川清・東京大名誉教授は「官僚中心でなく、海外の専門家も招き安全対策を進めるべきだ」と強調した。米プリンストン大のフランク・フォン・ヒッペル名誉教授は、日本が国策として進める核燃料サイクルを「コストが高く、核兵器にも転用可能だ」と批判した。

 別の全体討議では、中国の専門家から、日本のプルトニウム備蓄を中国政府が懸念しているとの報告もあった。(水川恭輔)

(2015年11月4日朝刊掲載)

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