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日本棄権に被爆地失望 核禁止の法的整備決議

 国連総会第1委員会で、オーストリアなどの核兵器禁止に向けた法的枠組みづくりを呼び掛ける決議案の採択を棄権した日本政府に対し、広島の被爆者たちは3日、失望し、怒りの声を上げた。

 「率先して核兵器禁止条約を世界に働き掛けるべき被爆国の行動として、棄権は許せない」。広島県被団協の佐久間邦彦理事長(71)は憤る。政府が主導した核兵器廃絶決議案で被爆地訪問を呼び掛けながら米国など核兵器保有国の賛同がなかった点も疑問視。「日本政府が何をしたいのか分からない。米国の『核の傘』から抜け、廃絶に向けた揺るぎない姿勢を世界に示すべきだ」と求めた。

 もう一つの広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(73)は、日本の決議案に中国が反発した点を踏まえ、「こんな思いを世界のだれにもしてほしくないという被爆者の願いは、被爆者以外には分からなくなっているのでは。だからこそ被爆地に来てほしいのに」と悔しがった。

 長崎市で開かれている、核兵器廃絶を目指す科学者の国際組織「パグウォッシュ会議」の世界大会会場でも参加者に波紋が広がった。長崎大核兵器廃絶研究センターの梅林宏道・前センター長は「日本の決議案が採択されたといってもオーストリアなどの案に比べれば平凡な内容。被爆国として非人道性に着目して核兵器禁止条約締結を目指す国際的な流れに乗るべきだ」と指摘した。(岡田浩平、水川恭輔)

(2015年11月4日朝刊掲載)

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